なぜトヨタ・クラウンは今や少数派のFRレイアウトにこだわるのか?

オーナーの若返りを図りつつも既存ファンも大切にする必要がある

 15代目と進化したトヨタ・クラウン。完全に新世代となったシックスライトウインドウのクーペ的なシルエットは若々しさを意識しているとアピールしつつ、先代モデルのイメージを受け継ぐフロントマスクは伝統的なクラウンらしさを守ろうとする意思も感じさせる。トヨタ・クラウン

 さらに、プラットフォームを含めたTNGA(トヨタニューグローバルアーキテクチャー)に基づき、ハードウェアも進化させた。トヨタ・ブランドとしてはTNGA初となるFRプラットフォームを採用し、まさに土台から新設計となっている。

 とはいえ、オーナーの若返りが重要なテーマと聞けば、「クラウン=FRレイアウト」にこだわる必要もないのではないだろうか。「高級セダンはリヤ駆動でなければならない」という価値観が、若返りを妨げているという見方もできよう。乗り心地やハンドリングの面ではFRレイアウトに優位性があったとしても、FFのほうがキャビンを広くとれるなど合理的だからだ。本当に若返るのであれば、そのくらいドラスティックに変革すべきという意見もあるだろう。

 ただし、トヨタのラインアップでみれば、若々しい中型セダンとしてはカムリがあり、当然のようにFFである。クラウンをFF化しても国内市場においてカムリと被るだけであり、メリットは少ない。

 そして、若返りといっても販売面を考えれば、多数派となる乗り換えユーザーを切り捨てるわけにはいかない。そうなると、基本の部分で「クラウンらしさ」を守る必要が出てくる。

 そのポイントとなるのがFRレイアウトだ。シックスライトウインドウ、大胆なフロントマスク、ハイブリッドとダウンサイジングターボだけのラインアップ……。新型クラウンが大きく変化しても、やはりクラウンらしく見えるのは、FRレイアウトに起因するプロポーションによるところが大きい。

 目立つところでいうと、FFにするとボディに対するタイヤの位置がAピラーに近づいてしまう。フロントタイヤの位置とフロントドアまでの距離をカムリとクラウンで比べてみれば一目瞭然。FRレイアウトだからこそ可能になるクラウンらしいプロポーションは骨格によると作り手が判断、市場も求めている限り、クラウンがFFに変身するというのは難しい。

 外連味のあるルックスとなり、パワートレインもハイブリッド中心となっても、クラウンらしい骨格を守るためには、現時点ではFRレイアウトを維持することは欠かせないのだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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