【動画あり】市街地走行だけならEV並み! ホンダ・クラリティPHEV公道試乗記

静かに走れるクルマだけにロードノイズが少し気になる……

 クラリティPHEVは、EV(モーターのみの)走行を存分に味わうことができるプラグインハイブリッド車であり、そこに感動した。PHVは、あらかじめ自宅などで充電しておくと、その電力が利用できる間はEV走行できる。日常的なクルマの走行距離は、40〜50kmなどと言われるため、多くのPHVはそれくらいのEV走行ができればよいだろうとしている。

 それに対し、クラリティPHEVはほぼ2倍となるJC08モードで114.6km、WLTCモードでも101.1kmと、100kmを超えるモーター走行性能を実現した。またEV走行できる最高速度が160km/hなので、国内の高速道路を含めほとんどの運転環境で電力の続く限りEV走行できるのである。

 今回の試乗でも、あえてHV(ハイブリッド)モードを選択しない限り、イグニッションスイッチを入れたあと市街地から高速までEV走行を存分に楽しめた。また、リチウムイオンバッテリーの搭載容量も17kWh(参考:初代日産リーフの初期モデルで24kWh)とたっぷりあるため、電力計の針もなかなか減っていかない。自宅で充電できる人なら、6時間ほどで満充電になるので、まさにEVを所有したような気分になれる。

 電気を使い切ったあとは、HVモードで700km以上走れる燃費(28.0km/L)とガソリンタンク容量(26L)を備える。総走行距離において、実用上何なら問題はないはずだ。

 EV走行中のロードノイズや風切り音もかなりよく抑えられており、モーター走行気分を快適に味わえる。またHV走行となってエンジンが始動しても、EV走行での静粛性を実現するため施された防音対策により、エンジン音がほとんど気にならない。

 一方、後席では前席以上にロードノイズが耳に届く。客室と荷室が別になる3ボックスセダン構造であるにもかかわらず、その点は残念だ。ここは、燃料電池車のクラリティ・フューエルセルでも同様だった。

 居住性では、PHVであるがゆえに、リチウムイオンバッテリーを前席と後席の下に搭載し、足もとの床が低く抑えられて足を下におろして着座できるうえ、前席下へ爪先を差し入れる余裕も残されている。床下前面にリチウムイオンバッテリーが搭載される日産リーフなどに比べると、ことに後席の快適性は優れる。

 乗り心地は、やや柔らかめのしなやかさがあって、上級4ドアセダンとして上質だ。それでいて操縦安定性には確かな手ごたえがある。省燃費タイヤを装着しているが、単に燃費を向上させるだけでなく、安定走行を確保するグリップにも配慮が行き届いているようだ。

 上級セダンとして荷室容量も適切な広さが確保されている。後席の背もたれを分割して前へ倒せる機構を備えており、長尺荷物を積み込むことも可能だ。

 クラリティはPHEVのほかに、燃料電池車(FCV)と電気自動車(EV)をひとつのプラットフォームで兼用する画期的な車体構造を持つ。なかでもPHEVは、もっとも有効にパッケージングがなされており、クラリティシリーズの中で一番買い得な車種といえるのではないか。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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