最近続々登場の3列シートSUVはミニバン代わりに使えるのか?

ほとんどのモデルの3列目席はエマージェンシーや子ども用

 世界的にブームの兆しを見せているのが3列シートSUV。もはやミニバンの代わりになると思っている人も多いはずだが、最初に言ってしまうと、3列シートSUVはミニバンの代わりにはならない。

 回りを見渡すと、3列シートのSUVがいつの間にか増殖。国産車ではトヨタ・ランドクルーザー、三菱パジェロ、同アウトランダー(ガソリン)、日産エクストレイル、マツダCX-8、レクサスRX、そして最新のホンダCR-V(ガソリン)などがそろう。輸入車でもランドローバー・レンジローバースポーツ、同ディスカバリー、ボルボXC90、アウディQ7、メルセデスベンツGLS、BMW X5、プジョー5008など数えればキリがない。

 そもそもSUVの3列目席は基本的にミニバンのような多人数乗車性を追求していない。ズバリ、緊急席、または子ども専用席として機能する。たとえばレクサスRXに加わった3列シート仕様の3列目席は、ひそかに「身長160cmまでの乗員に適応」……としていたりする。SUVは悪路走破性を高めるため、フロア(最低地上高)が高く、もちろん3列目席にアクセスするリヤドアはスライドドアではなくヒンジ式。乗降性からして不利なのである。

 子どもや愛犬を含んだ多人数乗車をする機会がそこそこあり、かつてミニバンに乗っていた人は、「狭くても3列目席があったほうが何かと便利そう」と思っていまいがちだが、くり返すけれど、ヴォクシー&ノアやオデッセイ、アルファード&ヴェルファイアの代わりには絶対にならない。

CX-8とXC90の3列目は実用レベルの広さだがボディは大きい

 それでもSUVに3列目席を! というなら、国産SUVであれば価格が異常にリーズナブルながら、搭載するクリーンディーゼルの出来が素晴らしいマツダCX-8を薦める。何しろ全長4900mm、全幅1840mm、ホイールベース2930mmの巨体である。室内長は2690mmもあり、たとえば大きく立派になりすぎた(価格も)感ある新型CR-Vの全長4605mm、ホイールベース2660mmよりはるかに長い車体ゆえ、3列目席に余裕があって当然である。

 身長172cmのボクが3列目席に座れば、頭上に80mm、シートスライドによって2列目席ひざ回りに180mmのスペースを持たせても、3列目席ひざ回り空間は120mmもあり、フロアからシート前端までの高さ=ヒール段差も340mmと、セダンの後席並。なおかつシートサイズがクッション長450mm、シート幅1110mm、背もたれ高620mmと、緊急席とは呼べないちゃんとした欧州車的かけ心地のシートとゆとりの空間が確保されている。

 さらに言えば、大きなリヤドアは80度も開き(逆に左右が狭い場所では全開できないが)、2列目席ウォークインでの足もと乗降幅は190mm〜とたっぷり。そして決定的なのは、2列目キャプテンシートの標準仕様を選べば、2-3列目席スルー(スルー幅225mm)でも3列目席にアクセス可能。乗降性も居住性もばっちりというわけだ。それでレクサスRXのような3列目席壁面のエアコン吹き出し口があれば完ぺきだろう(ボルボXC90の3列目席は高級感に溢れ、スペースやシートのかけ心地も良好。Bピラーにもエアコン吹き出し口があり、3列目席にも冷風が届く)。

 CR-Vの場合は、2列目席ウォークインでの足もと乗降幅120mm〜、頭上に100mm(サンルーフ仕様)はともかく、2列目席スライドが最後端位置だと3列目席ひざ回り空間は0。2列目席を前にスライドさせ、ひざ回り空間120mm(最大280mm)にセットしたときにやっと90mm。しかもシート前端のフロアからの高さはたった200mmしかなく、ひざを大きく立てて着座する姿勢になる。フロアは比較的フラットながら、2列目席シートスライドのレール4本があり、足もとは狭く、足の置き場にも困ってしまう。

 レクサスRXは2列仕様、3列仕様ともにホイールベースは2790mmと同一。どうやって3列シート化したかと言えば、リヤオーバーハング部分を110mm延長。2列目席ウォークインでの乗降性は悪くないものの、さすがに身長172cmのボクが3列目席に着座するとひざ回りスペースはゼロ。頭上方向には余裕があり座れないでもないが、ひざ頭が2列目席にあたった状態になる。3列目席を格納したときのフロアはほぼ完全にフラットになり、車中泊も可能なほどだから、3列目席格納前提なら使い勝手が良さそうなのだが……。

 ちなみに北米仕様には2列目キャプテンシートの用意があるそうで、ならば2-3列目スルーで乗り込むこともできるかも知れず、内側の足を投げ出すこともできるから、着座感はグッと楽になるに違いない。日本仕様にも「要望が高ければ」導入されるかもしれない……。

 つまり、SUVにもミニバンに近い3列目席の実用性を求めるなら、マツダCX-8やボルボXC90ぐらいの全長、ホイールベースを持たないときびしいということだ。

 それは3列目席の居住空間だけでなく、ラゲッジスペースの奥行きにも直接影響する。3列目席使用時でも全長にゆとりあるCX-8は500mm、XC90は770mmと実用上、十二分(高さ方向のゆとりもあるため)だが、例えばCR-Vは290mmでしかないから、スーツケースなどを積み込むには、3列目席を倒す必要に迫られてしまう。

 あとはCX-8やXC90のボディサイズが許容できるかどうか? ミニバンなら5ナンバーサイズのMクラスボックス型ミニバンでも3列目席はよりゆったり……なんですけどね。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

新着情報