トヨタ・ニッサン・ホンダに次ぐ存在! なぜSUBARUは強いのか?

販売台数ランキングではTNHの次にインプレッサが入る

 業界では、自販連(日本自動車販売協会連合会)統計、つまり軽自動車を除く登録車のみの販売台数のトップ3となる、トヨタ、日産、ホンダの頭文字をとって“TNH”などと呼ぶことがある。

 自販連による通称名別(いわゆる車名)での、2018暦年締めでの上半期(1月~6月)の販売ランキングをみると、トップから15位までは前述したTNHのクルマで占められるのだが、16位に初めてTNH以外のスバル・インプレッサがランクインしている。上半期の販売台数は3万554台となり、月販平均台数は約5000台となっており、いまどき月販台数が2000台を超えればヒットモデルといわれるなかでは、大ヒットモデルといっても過言ではない実績となっている。

 そのスバルがここまで販売実績で話題となったのは、やはり“アイサイト”をいち早く採用したことにあるだろう。それまでのスバルと言えば、車体色の青い(スバルブルー)スバル車に乗る“スバリスト”に代表される、“クルマ通”のブランドとして有名であった。

 いまよりマニアックブランドとして有名だったころにも、フォレスターなど一般ウケしそうなモデルはあったが、世の中のお父さんが「フォレスターなんかどうかなあ?」と奥さんに聞くと、奥さんはスバル車についてネット検索などをして「水平対向という変わったエンジンを搭載しているし、マニア受けするブランドのクルマはちょっとねぇ」とファミリーカーとしての購入にNGが出たという話も実際に聞いたことがある。

ぶつからないクルマ「アイサイト」の採用が一般に受け入れられる契機に

 そんなスバル車にいち早く、安全運転支援デバイスとして“アイサイト”が採用されると、“水平対向エンジン”や“スバリスト”などというネガなキーワードは影を潜め、世の中のママの間では“安全なクルマ”としての認知が広がった。今日のようにスバル車に対し、一般ユーザーが抵抗もほとんどなく購入を検討するようなケースが目立つようになったのである。もちろんスバルとしても、各モデルを一般ユーザーにより強くアピールできるようにキャラクターを変更しながら、従来のマニアックなニーズにも対応するラインアップの構築を行っている。

 アイサイトをいち早く広範囲の車種に採用したことにより、中古車市場では年式によっては、同年式の他メーカー車にはまだまだ安全運転支援デバイスの普及が進んでいなかったこともあり、リセールバリューが良くなっていることも人気に拍車をかけているようである。アイサイトは、他メーカーの同種の装備に比べれば、いち早く安全運転支援デバイスに着目して採用を広げてきた”ファーストペンギン”としての恩恵ではないが、その知名度と信頼度は抜群となっており、その面でもスバル車のリセールバリューを押し上げているようである。

 そのなかで比較的手を出しやすい車種としてインプレッサがあり、目立たないながらも大ヒットモデルとなっているようである。また同クラスではもちろんスバル以外のライバル車でも安全運転支援デバイスの採用は進んでいるが、アイサイトの知名度の高さがユーザーの注目をより浴びているようである。

他メーカーにはない販売スタッフの「SUBARU愛」も強みのひとつ

 ハード面だけでなくスバルは販売面でも注目に値する部分が大きい。以前より注目を浴び、インプレッサ以外も好調な販売が続くスバル車。もともと販売拠点は少なかったのだが、一時はどの店舗も週末には多くの購入見込み客でかなりの賑わいを見せている状況が続いたが、だからといって販売拠点の拡充は行われていない。

 つまり、週末には多くの店舗が来店客で賑わっている様子を通りがかりに見たひとが「スバルって売れているなぁ」と思わせ、それがさらなる呼び水となっているのだ。新車ディーラーが全面ガラス張りのショールームとなっており、わざわざ道路沿いに商談スペースを設けたりするのは、お客が多くいれば、それがさらにお客を店頭に呼び込むことを想定しているのである。

 セールスマンの対応もじつに秀逸である。スバルは一部車種を海外で生産している以外は、すべて日本国内で生産している。そしていまはやや沈静化しているが、数年前は中国や北米など世界市場でもスバル車が大ブレイクして、生産しても生産しても間に合わない状況が続き、ほとんどの車種で納期遅延が発生していた。そのときにたまたま隠密取材でスバルディーラーを訪れると、「いまは納車まで長い間お待たせしております。そのため値引きは頑張らせていただきます」と、良い意味で拍子抜けするトークを聞かされたことがある。

 スバルとよく比較されるマツダは一部の販売現場で、「良い製品なのだから値引きなどとんでもない」といったトーンで接客してくるセールスマンも目立つが(それでは時期によって大幅値引きもするメルセデスベンツやBMWなどは良い製品ではないのか?)、スバルは値引き販売にも積極的な姿勢を見せている。とくにカーナビなどを特別価格で装着できるなどの、用品特価装着キャンペーンなどもめだっているのも特徴的となっている。

 そして何より驚くのがセールスマンの“スバル愛”のすごさである。いまどきセールスマン自らがボンネットを開けてエンジンの説明をするのは、筆者の経験でもスバルだけである。しかも水平対向エンジンの説明では手でピストンの動きを交えながら熱心に行うなど、商品説明能力は日系ブランドではトップレベルなのは間違いない。

 ちなみに値引きが荒れるのは、商品知識にやや劣るセールスマンが値引きに頼ることが多く、商品説明に長けているセールスマンは全般的に値引きがそれほど荒れずに受注するケースが多い。つまり値引き販売には積極的ではあるが、セールスマン個々のスバル愛の強さから、“値引きが荒れる”商談はそれほど多くは結果的にないようなのである。

 クルマ好きがセールスマンになっているとは昔の話。いまどきの若者は自動車メーカーの看板を背負う新車ディーラーに安定感を求めて入社してくる傾向が多く、クルマにはそれほど興味がないといったセールスマンが若年層ほど多いのが現実なのである。

 独特の世界観のあるクルマを、アイサイトで一般ユーザーの認知度を上げ、そんなモデルラインアップに“あぐらをかく”ことなく、値引き販売にも積極的な姿勢を示す。しかもセールスマンのスバル愛はかなり凄い。

 いまは諸問題もあり販売現場は苦戦しているとも聞くが、クルマ作りから販売現場までがしっかりした共通認識のもとに動いていることが、スバルの強みになっているようである。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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愛車
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渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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