EV時代はまだ先の話? 環境にうるさいアメリカでも電気自動車は金持ちの道楽扱いという現実

景気の良さが庶民のエコ意識を薄くさせる

 南カリフォルニアをクルマで流していると、日本よりはるかに多くのEVに遭遇することができる。なかでも頻繁に見かけるのはテスラである。モデルSやモデルXなど、とにかく“犬も歩けば……”ではないが、テスラが多くフリーウェイや街なかを走っている。このテスラと同じぐらいに見かけるのがBMW i3である。こちらもかなり多く見かける。ほかにはシボレー・ボルト(VOLTではなくBOLTのほう)もチラホラと見かけることができた。

 いま全米単位で見てもガソリン価格は上昇傾向にある。そしてとくにカリフォルニア州は、もともとガソリン価格が高いのだがもちろん上昇傾向にあり、場所によってはオクタン価のもっとも低いガソリンでも1ガロン(約4リットル)あたり4ドルを超えるスタンドも出現している。

 南カリフォルニアではガソリン価格が4ドルを超えるとハイブリッドなどのエコカーが飛ぶように売れだすといわれていた。しかし、今回街を見渡すとそのような傾向はあまり見受けられない。地元の事情通に聞くと、「確かにガソリン価格が4ドルを超えるとかつてはエコカーが爆発的に売れました。しかしいまアメリカの景気は絶好調で、多くの消費者はガソリン価格にそれほどナーバスにはなっていないのです」とのこと。

 日本でも販売苦戦傾向が目立つともいえるプリウスだが、ここ南カリフォルニアでも大苦戦しているとのこと。さらに“プリウスキラー”として韓国ヒュンダイ自動車が投入したイオニックはさらなる大苦戦状態にあるとのこと。

 日本の場合好景気とされていても実感がないとの話も多いが、南カリフォルニアを歩けば、街の様子を見ただけで「景気いいなあ」と感じるほど経済は圧倒的に好調となっている。そのためエコカーよりも、V8を搭載する大型ピックアップトラックやV8を積まなくとも大型SUVなどに注目が集まっているのも現状となっている。

 ただエコカーが全面的に否定されているわけではない。エコロジーとか、ファッション感覚で乗るひとは多い。それでもプリウスやイオニックが苦戦傾向にあるのはそのスタイリングの不振もあるようだ。ホンダは名前こそ同じだが、従来モデルのような“いかにも”なスタイルをやめて、オーソドックスなセダンスタイルにした新型インサイトを北米でリリースしているが、こちらはメディア関係者にもおおむね好評を得ているとのこと。

 もともとアメリカでは地球環境などではなく、単に日々のガソリン代をセーブするために過去にはプリウスが大ヒットしたりした。もちろん4代目に比べ3代目のほうが万人受けするスタイルだったのも人気に拍車をかけたとされている。

 南カリフォルニアで歩いているとよく「ジージー」という音を聞く。たいていは電柱のある地域で、送電線が過送電状態のため鳴っているようなのである。また変電所の爆発もよくあり、停電も頻発するとのこと。電力自由化が始まってからインフラ整備に手が回らなくなっているのが理由とされている。

 そのようなインフラのもと、EVの本格的な普及が進めばインフラがもたないともいわれている。またEVの普及とリンクしているかは定かではないが、かつてのアメリカでは信じられないが、日本みたいにエアコンの温度調整まで呼びかける節電を奨励するテレビコマーシャルまで流れている。

 このような状況を見れば、南カリフォルニアですらEVはまだまだ“金持ちの道楽”的なイメージを強く受けた。つまりテスラがよく売れているのはエコカーではなく、あくまで“テスラだから”売れているのであるというのが現地の考え方のようである。

 そしてEV以外のHEVやPHEVなどは“ガソリン代がセーブできるクルマ”というイメージが強いことを改めて強く感じた。ただしいまはガソリン代の上昇傾向もあまり意識しないほどアメリカ経済は好調の真っただ中にあるのだ。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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