【試乗】SUVテイストは伊達じゃない! 本格4WD性能をもつ新型VWパサートオールトラック

30mmアップの車高はワインディングで爽快な走りに貢献

 フォルクスワーゲン(VW)の中核モデルであるパサート。ワゴンのヴァリアントをベースに仕立てた「オールトラック」が新バリエーションとして加わった。VWが得意とする4輪駆動システム「4MOTION」を搭載し、本格的なオフロード走行も可能としているという。今回はこのモデルに試乗してみた。

パサート

 パワーユニットにはDFC型。2リッター直列4気筒の直噴ターボ・ディーゼルエンジンを搭載している。そのパワースペックは最高出力が190馬力/3500〜4000rpm。最大トルクは400N・mを1900〜3300rpmで発揮するという。パサート

 車輛外観のイメージはアウディの「オールロード」を思わせる仕上げ。新しくデザインされたフロントバンパーはその下部にシルバーのアンダーガードをイメージした華飾を加えている。ホイールアーチに黒い樹脂製のエクステンションを配し、30mm高められた車高によるホイールクリアランスをスマートに見せ、流行のSUV車として訴求している。ルーフには荷物積載用のレールを設置。さまざまなシーンでの使い勝手を向上させているようだ。パサート

 車輛に乗り込むと通常のパサートと同様の豪華なインパネ&ダッシュボードが展開される。センターディスプレイは9.2インチという大型のタッチスクリーンで操作性、視認性とも大幅に向上している。パサート

 エンジン始動時の振動やノイズは極めて少なく、ディーゼル特有のアイドリング音はするものの室内は極めて静かだ。6速DSGツインクラッチトランスミッションをDレンジに入れて走り出す。出だしのエンジンピックアップは極めて力強く、かつスムースさも備える。スロットルペダルの踏み込みに対しエンジンレスポンスがリニアに応答するのでドライビングしやすい。

 このレスポンスはドライビングモードによってECO、コンフォート、ノーマル、スポーツと基本的な4段階から選択設定が可能だ。また今回オールトラック専用装備としてこれにオフロードモードが追加され、悪路への適合性を高めている。試乗コースに悪路は設定されていなかったが走行中に制御の変化を確かめてみた。

 エコモードではスロットルレスポンスが穏やかで、アイドルストップも積極的に動作する。コースティング(慣性)モードも機能して燃料消費を徹底的に抑えているのだ。トランスミッションの変速もハイギヤー側を多く使いエンジン回転を低く抑えようとしているのもわかった。パサート

 コンフォートモードでは電子制御ダンパーが減衰力を弱め路面からの衝撃を抑え乗り心地が良くなる。電子制御パワーステアリングは軽い操舵力でスムースな旋回をアシストし、不快な横G変化を抑えているようだ。同様にターボの過給も穏やかで前後G変化を小さくし快適性を求めている。

 ノーマルモードでは通常走行に相応しいパワー特性とサスペンションのダンピングが与えられ、パサートらしいキビキビとしたハンドリングと力強いパワー特性が引き出される。パワーステアリングはやや重くなり直進安定性の向上感を伴う。

 そしてスポーツモードでは各ギヤを積極的に高回転まで引っぱりパワーを引き出しやすくしている。ダンパーは減衰力が強まり、やや路面の凸凹は細かく拾うがコンチネンタル社製スポーツコンタクトタイヤのハイグリップ特性に上手く合わせ込まれている。パサート

 30mmアップの車高は低速のノーマルモード以下ではやや腰高なふらつき感があるが、高速かつワインディング路などG変化の大きなシチュエーションでは驚くほどの安定感と身のこなしの良さを発揮させていた。とくにロールを抑えたコーナリング時の車輛姿勢は素晴らしく、オフロードも走れる車高の高いツーリングワゴンを運転しているという自覚を忘れるほどだった。

 XDS(電子制御ディファレンシャルロック)が装備されたことで旋回限界も高まり、悪路では脱出性も確保されることになる。オフロードモードではエンジンがピークトルク位置を多用するようになり、ギヤもローギヤ側に振られる。悪路の走行抵抗に対して力強いトラクションを確保できるよう設定されているわけだ。さらに車速を30km/h以下にキープするヒルディセントも作動し、極悪路でも不安無く走行できるだろう。

 悪路に関しては雪のシーズンにテスト走行する機会がありそうなので、改めてレポートしたいと思う。パサートパサート


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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