夢の技術? ITSコネクトは自動車事故ゼロの社会を実現できるのか (2/2ページ)

自動運転のもつ危険性は人間のミスによる危険性よりずっと少ない

 自動運転となって、本当に機械や人工知能(AI)を信頼できるのか? といった議論もある。だが、自動車メーカーが異口同音に語るのは、交通事故の9割が人間の不注意や操作の間違いなどによって起きているとのことだから、そこを機械やAIが補完していけば事故を減らせられる可能性が上がる。

  

 また、トロッコ問題とも言われ、究極の選択を行わなければならないときにその判断をAIにゆだねていいのかとの不安もあるだろう。しかし一方で、人間がそうした場面に遭遇した場合、気が動転して判断を誤る可能性があり、その点、機械やAIは感情的に動転することはない。衝突を回避できるかどうか、その直前まで情報を分析し、わずかな可能性へ向け、入手できた情報によって決断されることになる。

 そのためにも詳細な情報の入手は不可欠であるといえる。たとえば信号を見分ける際、カメラの精度や、分析の計算速度を車両側で高めると同時に、信号設備のほうでも信号が変わる情報や、次にどの色に変わるかといった事前情報を通信でクルマへ知らせることも行えば、信号を見誤る可能性が減っていくだろう。また、その情報を確認した前のクルマが減速をはじめれば、クルマ同士のやりとりにより、後続のクルマも減速や停止へ備えることができることになる。

  

 なぜ、自動運転を目指すのか。

 昨年の交通事故死者数が約3500人へ減ったとはいえ、なおそれだけの犠牲を強いてクルマ社会が成り立っていることを忘れてはならない。疑問を呈する前に、目指すべき目標を明確にし、その実現へ向けた挑戦意欲を、あらゆる関係者が高めることが大切ではないだろうか。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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