安全性も走行性能もクルマは大幅に進化したのに50年前のまま! 日本の制限速度はなぜ見直されないのか (2/2ページ)

いまのクルマは制限速度以上で走れる安全性を備えている

 一方で、クルマの安全という視点や電動化の視点から、ドイツのアウトバーンの速度無制限に対して、反するクルマづくりがはじまっているのも事実だ。

 ボルボは、交通事故による死傷者をゼロにするため、世界で販売するクルマの最高速度を時速180kmにするとした。また、メルセデス・ベンツは、電気自動車(EV)のEQCの最高速度を時速180kmに制限している。そのように、無闇に高い速度で走ることに対しては、疑問視する動きもある。

 とはいえ、50年前といえば、通信手段に固定電話はあっても今日の携帯電話はなく、また手紙を書くことが当たり前の時代だった。しかし現在はインターネットが普及し、世界各地の情報がパーソナルコンピュータはもとより、スマートフォンで瞬時に手に入れられるように様変わりしている。誰もが、瞬時に通信を交わし、素早い思考で日々生活を送っている。

 そういう時代に、手紙を出していた当時と同じような制限速度でクルマを走らせることに、どれほどの意味があるのだろう。クルマの性能も、制限速度以上で走れる安全性を備えている。日本の行政は、手紙からインターネットとなった時代においても、なんら現場・現物・現実を直視することなく、50年前の手紙を書く時代感覚のまま手をこまねいているのである。はっきりいって、行政の怠慢であろう。そして警察は、運転者を速度違反で取り締まり、役目を果たしていると勘違いしている。

 ようやく、新東名高速道路で時速120km制限の実施が一部はじまった。制限速度が上がったからといって、その速度で走らなければいけないという話ではない。安全確保は、少なくとも自動運転が実現するまでは、あくまで運転者の責任である。

 ところが運転者のなかにはその自覚に乏しいまま、法規を守っていればいいという安易な姿勢で、通行帯違反をしていながら速度違反はしていないと居直り、追い越し車線を走行し続けて周囲に迷惑をかけ、結果、あおり運転の被害に遭う事態を招いているといえなくはない。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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