【なぜ最初から改良の必要がない完成型で発売しない?】自動車メーカーがマイナーチェンジを行うワケ (1/2ページ)

商品力を維持向上するために最新の装備を取り入れている

 イヤーモデル、商品改良、マイナーチェンジ……言葉は異なっても、最近のクルマは早ければ毎年、遅くとも3年に一度は改良を実施する。その内容は、エンジンやトランスミッションを見直すといった機能面での進化であったり、内外装のブラッシュアップといった目に見える部分の変化であったりするが、いずれにしても商品力アップが最大の目的といえる。

 理想論でいえば完璧な商品を開発すれば、販売期間のなかで改良の必要はないと言いたくなるが、自動車市場の状況はライバルの存在やニーズの移り変わりなど常に変化している。仮に、ある時点で完璧な商品を作り上げたとしても、その商品力がずっと続くことは考えづらい。もちろん、特定の個人において代わりのきかない最高の相棒と認識されることはあるだろうが、大量生産される工業製品としてはむしろ常に進化するほうが正義といえる。

 最近の商品改良ではパッと見では変わったことがわからないような内容であることも珍しくなくなっている。一例をあげると、ここ数年スズキの軽自動車のマイナーチェンジを見ていると、内外装はそのままにAEB(衝突被害軽減ブレーキ)のセンサーを変えるなどして対応速度を上げたり、歩行者を検知できるようにしたりといった進化を遂げてきた。また最近ではハスラーのフルモデルチェンジに合わせて登場した最新型エンジンを、ワゴンRにも載せるといったマイナーチェンジを実施している。

 ほかにもマツダが小まめなマイナーチェンジ(ものによっては1年未満での改良もある)によって走りのよさを磨いていることも印象深い。いまのトレンドは、単に「かわり映え」を狙うのではなく、常に進化するテクノロジーを最新モデルだけでなく、既存モデルにも広く展開しようという意思が感じられる。

 あらためて、冒頭で記したように「完璧な商品を作ればマイナーチェンジは不要」という主張は、すべての技術が進化しないという世界でしか成立しない。しかし、前述のように先進安全装備については、その進化のスピードがモデルチェンジサイクルを大きく上まわっている。そして、安全や環境といった機能についてはユーザーニーズも高まっている。かつてのように次のフルモデルチェンジで採用するなどと悠長なことは言っていられない。かつてよりも商品改良のペースが速まっている印象すらある。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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