【環境への影響は大きそうだがなぜ?】トラックやバスのEV化が進まない理由とは (1/2ページ)

原価が下がらなければ導入は難しいだろう

 消費財と生産財という言葉がある。同じクルマでも自家用車は消費財であり、商用車は生産財だ。個人が自分のために使うクルマは、本人が納得すれば経済的に多少の損はあっても、趣味嗜好などを含め気持ちが納得すれば価値を生む。一方、生産財の場合は経済性が絶対的な価値であり、車両価格や運用経費が適正で、事業に利益をもたらすことが前提になる。

 トラックやバスの電気自動車(EV)化については生産財であるため、車両価格や運用経費が既存のディーゼルエンジン車に比べて安価であることが導入の動機づけになる。

 消費財としての自家用の乗用車でも、EVはリチウムイオンバッテリーの原価が高いとの声がなおある。したがって、生産財であるトラックやバスにおいては、一充電走行距離や充電設備などの性能や利用に関する課題以前に、車両価格につながる原価低減が最優先課題となる。

 たとえば三菱ふそうでは、2017年に世界初の量産EV小型トラックであるeキャンターを発売した。商品概要の説明では経済性にも触れられており、燃料代となる電気代を、そのときの軽油や電気の時価にもよるが大幅に削減できる。それによって維持費が約30%削減できるとし、導入での初期投資が約3年で償却される試算だという。それでも望ましいのは車両価格がディーゼルエンジン車と同等なことで、そのうえで維持経費を削減できれば、もはやディーゼルエンジンのトラックを使い続ける理由はなくなる。

 事業経営は、先々を見越した計画の上で実行されるとはいえ、いまは低成長時代であるうえ、トラックやバスの運転者の確保が難しくなっている。数年先で採算が取れると言われてもあくまでそれは試算であり、初期投資がより多く掛かることを経営者は好まないだろう。そこは、路線バスも観光バスも同様であると考えられる。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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