「問題」はコロナ前からあった! 経済が回復しても「タクシー業界」を襲う「苦難」とは (1/2ページ)

新型コロナウイルス感染拡大下で厳しい状況に置かれている

 新型コロナウイルス感染拡大により、大きなダメージを受けている業界として、旅客運輸業界もクローズアップされている。ただ、メディアで取り上げられるのはバス業界が目立ち、タクシー業界は取り上げられることが少ないのが実状といえるだろう。

 新型コロナウイルスの感染拡大が始まった今年春ごろには、それでもメディアでは全国各地でタクシー事業者の廃業や運転士の解雇が頻発したというような報道が相次いでいた。これについて業界事情に詳しいA氏は「すべての事業者が当てはまるわけではありませんが、もともと廃業を検討していたなか、新型コロナウイルス感染拡大が始まったので、“このタイミングで”とばかりに廃業するというケースも目立っていました」とのこと。

 感染拡大が全国に波及し、緊急事態宣言が発出されるようになると、当然外出自粛が要請されていることもあり、街なかを走るタクシーの数も激減した。雇用調整助成金などを申請し、運転士に休業要請する事業者もあったようだ。ある運転士は「あのころは極端に稼働台数が減っていましたから、月1回や2回乗務できればよかったですね」と様子を話してくれた。乗務できる機会はかなり減ったのだが、それでも乗務できると地域にもよるのだが、日中を中心に稼働台数が極端に少ないこと(街なかを走るタクシーが少ない)もあり、利用客が多く、前年よりも1台あたりの営収(営業収入)が多かったというケースもあったと聞いている。

 バスに比べてタクシーが目立たないのは、運転士の構成にもあるようだ。タクシー運転士の高齢化はいまに始まった問題ではないが、そのためもあり、運転士の多くは年金を受け取りながら乗務を続けているひとが多い。

 そのため、高齢運転士のタクシーに乗ると「私は年金をもらっているからまだいいけど……」という話はよく聞いた。タクシーの売り上げは乗務回数が減っていることもあり激減しており、当然収入も激減しているのだが年金を受け取っているので、世の中が思っているよりは深刻な状況(いますぐどうなるというわけではない……それでも深刻なのには変わらないが)ではないというのである。収入面よりも、新型コロナウイルスへの感染(運転士自身が高齢のため重症化を危惧)を心配して、自ら1カ月といった長期間の有給休暇を取得する運転士もいたと聞いている。

「異業種から転職して運転士をやっている、育ち盛りの子どもを抱えているような現役子育て世代など、若手運転士は事態が深刻なようです。家族を養うのに満足のいく収入にしたいなら、月70から80万円の売り上げがないといけないとされていますので、隔日勤務(1出番あたり連続20時間ほど乗務)でフルに乗務できても、平均営収で毎出番軽く5万円以上売り上げなければならず、新型コロナウイルス感染拡大下では状況は厳しいといえるでしょう」(事情通)。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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