こんなクルマ公道に放っていいの? レーシングドライバーをも震え上がらせた「過激すぎる」モンスター3選 (1/2ページ)

レーシングカーよりも運転が難しかった!

 過激なタイトルだが、乗ってアクセルをひと吹かしした瞬間にそう思わざるを得ないほど過激な性能を発揮するクルマも多く存在する。

 レーシングドライバーである僕が経験したなかで「これは!」と絶句したのは、まずは「ジオット キャスピタ」だ。レース界では有名なレーシングカーコンストラクターである「童夢」が服飾メーカー「ワコール」社との共同企画で開発と製作をした国産スーパーカーだ。量産販売を目的として作られた試作車で公道を走れるようにナンバーが取得され、そのイメージビデオの撮影のためドライバー役を任されたことがあるのだ。車体外観は空力を得意とする童夢が風洞を駆使して磨き上げた完全なスーパーカーだ。

 シャシー構造もカーボンモノコックを駆使し、レーシングカーとしても通用しそうなほどの設計が施されていた。なにより搭載エンジンが凄い。企画ではスバルとイタリアのモトーリモデルニ社が開発するF1用3.5リッター水平対向12気筒エンジンを搭載するとされた。

 しかしエンジンの開発が遅れ、試作車に搭載されていたのは当時F1界でF1チーム用に市販され実際に使用されていた英国・ジャッド社製のF1用3.5リッターV型10気筒エンジンだったのだ。とくに一般道走行用にデチューンされたわけではなく、レース仕様のものが、ほぼそのまま搭載されていた。そのためエンジンの始動もドライバー一人では不可能で、メカニックが始動させる。

 F1レースでは12000回転を常用域としていてアイドリングは4000回転。止まっていたらみるみるオーバーヒートしてしまう。トランスミッションもF1レース用そのものの6速で、重いクラッチを操作する。問題はローギア(1速)でも4000回転でエンストしないように5000回転を超えてドライブすると速度は60km/h以上となり、一般道では速度違反になってしまう。そのため60km/hになったらクラッチを切り惰性で速度調節しなければならなかった。エアコンの装備もなく、キャビンは熱くてレーシングカーを操るより運転が難しく大変だった。

 結局量産されることはなく、ナンバーを所得したのはこの試験車1台だったと思うが、童夢とワコール社の奇想天外な企画力が生み出したモンスターカーだった。

 ジオット キャスピタは極端な例だが、もっと身近にもレーシングドライバーをも震え上がらせる走行性能を発揮してしまうクルマはたくさんある。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
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海外巡り
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クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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