いまだにシガライターソケットが主流! クルマに「AC100V」のコンセントが標準装備されないワケ (2/2ページ)

ハイブリッドを名乗っても1500Wが賄えないモデルもある

 では、なぜ、一部のハイブリッドカーやPHV、EVにしかAC100V/1500Wコンセントが用意されないのだろうか。その理由は、当たり前のことながら、AC100V/1500W電源を供給できる、余裕ある容量のバッテリーの積載が不可欠だから。プリウスなどは2モーターを備えたストロングハイブリッドと呼ばれているが、1モーターのハイブリッド車、微細なモーターアシストのみのマイルドハイブリッドの、廉価かつ軽量コンパクトな小容量バッテリーでは、AC100V/1500Wの電力などまかなうことができないのである。数万円のコストやユーザーニーズも、セダンなど、車種によって採用されない理由となる。

 現在、AC100V/1500Wコンセントを用意しているクルマは、三菱ではアウトランダーPHEV、トヨタではプリウス、プリウスPHV、ヤリスHV、アルファード&ヴェルファイアHV、ノア&ヴォクシーHV、RAV4 HV、RAV4 PHV、カローラツーリングHVなどのHV、PHVほぼ全車(レクサスも同様)、ホンダではホンダe、オデッセイHV、ステップワゴンHVなど、日産ではリーフ……というわけで、繰り返すが、HV、PHV(PHEV)、ピュアEVに限られている。もちろん、EVでもホンダeのように、ベースグレードには付かない、という価格戦略上の設定もあったりする。

 ここでのポイントは、HV、PHV(PHEV)であれば、バッテリーが底をついても、エンジンを始動させることでバッテリーに充電できること。ピュアEVでは、充電しない限り、そのリカバリーができないという点だ。つまり、同じAC100V/1500Wコンセントでも、災害時、停電時により心強いのは、エンジンを積むHV、PHV(PHEV)ということになる。ガソリンがある限り、エンジンによる発電でバッテリーに電力を蓄え、電力を供給し続けることができるからである。

 もっとも、ハリアーのオプション価格を見てもわかるとおり、AC100V/1500Wコンセントの値段は税込み4万4000円と決して安くはない。クルマをアウトドアライフで頻繁に使うような人は別にして、一般的に車内外でAC100V/1500Wコンセントを使う機会がどのぐらいあるか? そう考えると、災害時、停電時の給電設備として有効であることがわかっていても、車両本体価格をできるだけ抑えるため、オプションにしているケースが多いというのも納得できる。

 とはいえ、クルマを便利に使うために、なんらかの小電力を供給する機能=電源は必要だから、今やシガー用ではないDC12Vのアクセサリーソケットがしぶとく生き残っているというわけだ。

 日本は災害、地震大国でもあり、世界のクルマの電動化の流れとは別に意味で、HV、PHV(PHEV)に用意されるAC100V/1500Wコンセント、および給電機能が用意される、大容量バッテリー搭載の電動車の存在意義、価値は極めて大きいとも言えるだろう。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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