トヨタ・日産・ホンダ・三菱が「e-Mobility Power社」に巨額の出資! 「利益目当て」じゃない尊い目的とは

EVを出すだけでなくインフラの整備を加速させることも重要

 東京電力ホールディングスと中部電力が出資するe-Mobility Power社に、自動車メーカーから、トヨタ、日産、ホンダ、三菱自が出資した。e-Mobility Power社は、これまで電気自動車(EV)への充電サービスを行ってきた日本充電サービス社(NCS)から業務を引き継ぐことになる。

 そして今後EVの普及が進んでいくことを見越して、全国に約2万1700基ある充電網を、さらに充実させていくことになる。

 自動車メーカーで出資したのは上記4社のみだが、ほかの自動車メーカーや輸入業者が国内の充電網を利用できないわけではない。現状、出資した4つの自動車メーカーは、いずれもEVやプラグインハイブリッド車(PHEV)をすでに市販しており、またPHEVでも国産車は急速充電口を備える車種もあるため、とくに急速充電器の利用においてe-Mobility Power社とより深く関わることを考慮したのだろう。

 過去にもこの4社は、政府が1005億円の予算を計上して充電網の整備に乗り出した際、政府の補助金だけで賄いきれない残金を、4社による協議会を通じて融通することを行ってきた。2009年に三菱i-MiEVが、2010年に日産リーフが市販されたあと、当時のトヨタとホンダはまだEVを市販していなかったが、EV市場を見越して協力した経緯がある。

 今日では、レクサス、ホンダ、マツダもEVを発売するようになったが、それらはまだ販売台数の規模が極めて少ない。それでも、日本が脱炭素を世界へ明確に示した以上、上記4社以外もEVの充電網に対してより積極的な働きかけが求められることになるのではないか。もやは、タダ乗りは、メーカーの大小を問わず将来の自動車社会を担う上で責任を十分に果たしていないと消費者の目に映るかもしれない。

 EVを販売することだけが自動車社会の未来への貢献ではなく、それを便利に使える社会を構築することを求めるのがEVである。そこがエンジン車や従来のハイブリッド車(HV)と異なる点だ。トヨタが宣言した、カーメーカーからモビリティカンパニーへという転換は、まさにひとつの象徴といえるだろう。

 すでにe-Mobility Power社では、とくに重要な充電拠点には高出力の急速充電器を複数台設置する計画もあるようだ。EVの市場占有率が高まれば、当然必要となる社会基盤整備である。EVの導入は、21世紀の自動車メーカーとしての意識改革も求めることなのである。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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