走る楽しさをとことん追求! 新型ホンダ・ヴェゼルの運動性能へのこだわりをエンジニアにインタビュー (1/2ページ)

SUVらしいキビキビとした走りを際立たせた

 新型ホンダ・ヴェゼルは劇的に変化したデザインが大きな注目を集めているが、その走り、とくに初代の初期型では弱点とされていた乗り心地やハンドリングも大きく進化しているという。その中身と目指したものは何か、ボディ設計を担当した小林幸治さんと、シャシーのテストなどを担当した平村 亘さんに聞いた。

──初代ヴェゼルは徐々に乗り心地とハンドリングが改善されていきました。その一方、新型ヴェゼルのベース車と言える新型フィットは非常に穏やかな走り味になりました。それらに対し新しいヴェゼルは、どのような走りの方向性で開発されたのでしょうか?

平村:おっしゃる通り初代ヴェゼルの走りは徐々に進化していきましたが、その先にあるものは何か……と考え、初代のユーザーがどのように感じているかを調査し、自分自身も乗ってみて感じ取りました。すると、時代の流れとしても乗り心地が非常に重要になっているものの、走りの楽しさもホンダ車が持つ大切な要素である、ということがわかりました。

 そうしたときに何が必要かということでいろいろ試行錯誤した結果、しなやかに動くサスペンションを作るため、各部のフリクションを下げました。また、プラットフォームは同じながら、変化したエクステリアデザインやキャビンまわりにも合わせ込んだうえで、ボディ剛性を最適化、大事な部分だけ補強し剛性をアップしています。そうした土台があったうえでのサスペンションの滑らかな動きですから。

 一方で動きすぎる領域、マンホールを越えたときなどの大入力時はリヤに強い突き上げが入りますので、それをうまくいなすために、バンプラバーの特性を調整することで、リヤサスペンションの有効ストロークを増やしています。

 ハンドリングに関しては、リヤのスタビリティがあってこそですが、リヤタイヤをうまく活かすには、こうしたトーションビーム式ではマルチリンク式などに比べて厳しい点があるのは事実です。ですがポテンシャルを底上げするため、コンプライアンスブッシュにリブを立てて、横方向の動きを制御しています。ブッシュの容量そのものも増やしていますので、大入力を前後方向にもいなしつつ、上方向のストロークもアップしています。これは両立が非常に難しい領域ですが、今回はそれができました。

 エクステリアデザインを見て「あ、シンプルで美しいな、乗りたいな」と感じたとき、見た目から受けるイメージと実際の走りが合うように作っています。

──このリブを立てたコンプライアンスブッシュは、現在のところは新型ヴェゼルだけですか?

平村:はい、そうですね。

──これで、片輪だけ大きな凹凸に乗り上げたときに、横に揺れないようにしているんですね。

平村:そういう効果ももちろんあります。ヘッドトス(頭部の横揺れ)も緩和できますね。

──こういうSUVは大径タイヤ&ホイールを装着し、地上高も上げているので、操縦安定性と乗り心地を両立させるのが非常に難しいジャンルですよね。

平村:そうですね。フィットはかなりしなやかな方向に仕上げられていますが、ヴェゼルはそこまでしなやかにはせず、SUVとしてしっかりした乗り味を持たせています。

──では、フィットのように穏やかな方向性ではなく、もっとキビキビした走りの性格に仕上げたのでしょうか?

平村:そうですね。ヴェゼルは初代がキビキビした方向性ですので、それは大切なところとして持っておきたいと思いました。それは、乗り心地のほうに振りすぎるとスポイルしてしまいますので。

──ボディに関してはとくに入力点や構造上弱いところを強化しているんでしょうか?

平村:はい。初代はリヤにパフォーマンスロッドを後付けしていますが、今回フルモデルチェンジするにあたり、それは構造物に取り込んでしまおうと。また、バックドア上部が初代よりも深く傾斜した形状になりましたので、それに伴って開口部が拡大したんですね。そうするとどうしてもねじり剛性が下がりますので、バックドア開口部まわりを三つ叉構造にしてしっかりつないでいます。

 また、路面と唯一接するタイヤにもこだわりました。18インチ仕様はミシュラン・プライマシー4で、これがレベルの高いグリップ性能を発揮するので、それをうまく活かせるよう、サスペンションとボディをトータルで作り込みました。

──16インチ仕様のタイヤは?

平村:e:HEVがハンコックさん、ガソリン車がダンロップさんのものになります。


遠藤正賢 ENDO MASAKATSU

自動車・業界ジャーナリスト/編集

愛車
ホンダS2000(2003年式)
趣味
ゲーム
好きな有名人
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