再利用品への交換が鍵だった! EVの「ライフサイクルではエコじゃない」論争に決着 (2/2ページ)

クルマでの利用を終えた後もさまざまな利用方法がある

 モーターは半永久的に使える部品であり、車体もまだ使える状態であれば、バッテリー交換して使い続ければ安上がりで済む。

 しかも、再利用バッテリーであれば材料から生産するわけではなく、製造時の二酸化炭素(CO2)排出量はゼロになる。新車開発の際に織り込まれているからだ。近年、ライフサイクルで環境性能を語ることが多くなったが、再利用バッテリーの有効活用は、1台のEVの環境性能をより高めることにもなる。

 そもそも、EVに車載されるリチウムイオンバッテリーは、クルマとしての用途を終えた後もまだ6~7割の容量を残しているとされる。したがって、最上品質の再利用バッテリーでなくても、太陽光や風力発電の蓄電用や災害の緊急支援の電力供給源としての用途が残されている。

 EV製造時のリチウムイオンバッテリー生産でCO2排出量が多いとの意見があるが、EVとして使えるのはその3~4割でしかなく、その後の活用を視野に入れれば、二次利用を考慮しない現在のライフサイクルの考え方自体が時代にそぐわなくなっているのである。いわば、前世紀の評価法だ。それを頼りに、EVとエンジン車やハイブリッド車(HV)の環境性能を比較する論調は、物事の本質を知らないといわざるを得ない。

 ところでリチウムイオンバッテリーを上手に利用し、劣化を抑える方法は充電を適切に行うことだ。充電した電力を使い切ってから、100%の充電を繰り返すと劣化が進みやすい。EVに限らずスマートフォンなども同様だ。バッテリー電力をある程度残したところで充電し、80%ほどで充電を止めておくのが長持ちの秘訣だ。

 愛用のEVを永く使いたいなら、日々の充電の仕方からうまい付き合い方をしていくといい。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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