モータースポーツイメージが薄い? いやトヨタのル・マンの歴史を見ると「情熱と凄さ」がまるわかりだった! (2/2ページ)

ハイブリッドマシンによる新たな時代へ突入

 その後、トヨタの国際レース活動は、2002年から2009年までF1に傾注されることになるが、それとは別に国内でハイブリッドカーによるレースへの試験参戦が始まっていた。そして2012年、ACOとFIAはスポーツカーによる世界メイクス選手権レースシリーズ(WEC=世界耐久選手権)をハイブリッドプロトタイプカー規定で実施。HVの基礎開発が進んでいたトヨタは、FIAからの打診もあり、参戦計画を1年前倒しにして同年よりTS030で参戦。

 歴史的にF1は、ドライバーの世界一を決める世界選手権で、タイトルもドライバーとコンストラクターに冠せられた競技だったが、これとは逆に、製作した車両のメーカーに世界タイトルが冠せられるレースがメイクス選手権(マニファクチャラーズ選手権と呼ばれた時代もあった)で、市販スポーツカーメーカーや量産車メーカーは、世界一の座をかけてスポーツカーレースに傾注してきた歴史があった。こうした意味では、時代を担うハイブリッド技術でトップランナーの座に上り詰めていたトヨタにとって、ル・マンとWECシリーズは天分ともいえるカテゴリーだった。

 HV規定立ち上がり初年度の2013年からル・マンとWECシリーズに参戦を開始したトヨタだったが、必ずしもトヨタにとっては公平とは言い難いレギュレーション下で、アウディ、ポルシェを相手にル・マンでは紙一重のレースを幾度か展開。前半戦を圧倒的優位でリードした2014年は、想定済みのマイナートラブルでリタイヤ。非常に惜しまれた。2016年はあと3分強を残す段階で、トップのままメインストレートで停止するという非常事態。結局、規定時間内にチェッカーを受けられずリタイヤとなってしまう。

 さらに、必勝を期して3台で臨んだ2017年はトラブル、アクシデントによって全滅。この間、2013年、2016年と2位チェッカーはあったものの、負けたレースのほうにあと一息だった、と悔やまれるレースが連続した。

 最終的には、自身のクォリティを確立すればよい、という結論に至った2018年、走り込みに走り込みを重ねて熟成したTS050を持ち込み念願のル・マン初制覇を実現すると、2019年、2020年と続けてル・マンを3連覇。そしてLMプロトより市販高性能スポーツカーに近い形態と定められたハイパーカー規定の2021年ル・マンで、本命と目されながら1度も勝てなかった小林可夢偉組がGR010で初優勝。トヨタとしては、ル・マン4連覇という偉業を成し遂げるかたちとなっていた。

 ちなみにル・マンの連覇記録は、トヨタが記録した4連覇以上はフォード(4連覇、1966〜1969年)、アウディ(5連覇/2度、2004〜2008年/2010〜2014年)、フェラーリ(6連覇、1960〜1965年)、ポルシェ(7連覇、1981〜1987年)の4メーカーが存在するのみ。また、トヨタはF1、WEC、WRCとある世界3大選手権のうち、WECとWRCで複数回世界チャンピオンに輝いた唯一の日本メーカーでもある。

 現状、ハイパーカー規定下でのHVカーはトヨタのみの状態だが、来年以降いくつかのメーカーが参入を発表。魔物が潜むと言われたル・マン24時間で、勝てるノウハウを身につけたトヨタが、来年の5連覇、そしてル・マンが100周年を迎える2023年の大会での6連覇を目指し、お家芸のHV技術に磨きをかけて挑戦する姿勢を打ち出している。注目が集まるトヨタの連覇記録。大いに期待したいところだ。


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