登場しては消滅……の連続! 走りはいいんだけどなぁ……な「低全高ミニバン」4台と今は見かけないワケ (1/2ページ)

この記事をまとめると

◾️ミニバンブームの最中には、あえて全高を低くして他車種との差別化をはかった車種が存在した

◾️低全高ミニバンは実用性はそのままに走行性能も大事にしたいユーザーからは支持された

◾️ミニバンには居住性を求めるユーザーが多く、ヒット作となった低全高ミニバンはごく一部だ

ミニバンだからといって背が高いとは限らない

 ミニバンと聞いて、たとえばトヨタ・アルファードやノア&ヴォクシー、ホンダ・ステップワゴン、日産セレナといった、ボックス型で両側スライドドアを備えた背の高いクルマを想像する人がほとんどだろう。

 しかし、かつてはそうした高全高ミニバンに対抗する、低全高を売りにしたリヤヒンジ式ミニバンも数多く存在したのである。それは、高全高ミニバンに対して、室内の広さ、天井の高さより低重心パッケージで走りにも振った、運転好き・走り好きユーザーのための多人数乗用車というものだった。いや、空前のミニバンブームのなか、さまざまなミニバンの選択肢を用意し、より多くの人に3列シート車を買ってもらいたい……という自動車メーカーの策略もあったに違いない。

 その車種の多くが、走りで売るホンダ製というのも、なるほど頷けるというものだ。ここでは、立体駐車場への入庫も容易な、全高1550mm以下の国産ミニバンに絞って、低全高ミニバンを振り返ってみたい。

 国産初の低全高ミニバンが、ホンダのクリエイティブムーバーとして1994年に初代が登場したオデッセイの、2003年デビューの3代目である。1~2代目のまっとうな高全高ミニバンパッケージに対して、いきなりの全高1550mmである。2代目オデッセイのアブソルートV6に乗っていた筆者が3代目を買わなかったのは、やはり室内空間がミニバンらしくないことが理由だった。

 しかし、低全高・低重心を生かした走りっぷりは、ミニバンの皮をかぶったスポーティカーというもので、パワーユニットこそ2代目までにラインアップされていた3リッターV6はなくなり、アコードなどと共通のK24A型、2.4リッター直4DOHCのみになったものの、アブソルートは標準車の160馬力に対してハイオクガソリン仕様となり200馬力を絞り出すなど、まさに走りのミニバンだったのである。

 ちなみに5代目オデッセイ登場時に開発陣に聞いたところによると、2013年時点でもっとも残存率が高いオデッセイが3代目だったとのことだった。それもそのはず、スポーツカー、スポーティカーの走りを諦め切れないファミリーマンにとって、アブソルートは最高、最善の選択だったのである。

 そして2008年登場の4代目オデッセイは、ミニバンとしての高級感を増すとともに、全高をさらに低い1545mmに設定。1220mmの室内高は3代目と変わらないものの、室内長を60mm拡大し、2-3-2席のシートを視界確保のためV字配列とし、3列目席の居住性を高め、モーションアダプティブEPS(電動パワーステアリング)を採用するなど、さらなる走りのミニバンとしての進化を遂げている。パワーユニットは3代目同様のK24型だが、ハイチューンのアブソルートはハイオクガソリン指定で206馬力までパワーアップされた。

 年次的に3代目オデッセイに続く低全高ミニバンといえば、2006年に登場した、これまたホンダの5ナンバー3列シートミニバンの2代目ストリーム(初代は低全高でも1590mmなのでここでは割愛)。

 もちろん、立体駐車場への入庫性を高めるための低全高だが、ホンダとしては一段と低重心な走りの磨き込みも忘れてはいない。パワーユニットは1.8リッターと2リッターで、とくにRSZは専用サスペンション、パドルシフトが備わるなど、走りのミニバンをより鮮明にしたグレードだった。

 もっとも、さすがに5ナンバーボディで7人乗り、3列目席の広さ、快適さを確保するのは難しく、2009年のMC時に2列シートのコンパクトワゴンと呼んでもいいRSTグレードを追加。乗り心地を含めた走りの進化も著しかったと記憶している。

 2012年には3列シートモデルの乗用定員を、2列目席を2名乗車とすることで6名に変更。これも限られた室内空間でより広々と過ごせる配慮だったのだ。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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