走る歓び第一! でも安全も第一! マツダらしい運転支援「CO-PILOT」が走り命のジャーナリストを唸らせた (2/2ページ)

同乗者や周辺の運転者に危険を知らせながら安全に停止する

 そうしたMAZDA CO-PILOT 2.0に相当する機能を体験できる機会をいただいた。現在開発が進められているシステムをマツダ3に搭載した試作車に、同乗試乗というかたちではあるのだが、都内の一般公道で乗らせていただいたのだ。

 2022年に実装されるMAZDA CO-PILOT 1.0では周辺環境などの認識はベース車が持つセンサーを使って行われるが、こちらは360°をモニタリングする12個のカメラと高精度マップ、ロケーターECUなどが備わり、ECUにも量産仕様ではなく試作PCが使われている。

 このシステム、本来はドライバーをモニタリングして異常や異常の予兆を検知すると自動的に作動する仕組みなのだが、現在はテスト車両の実験中の段階であり、周囲に他車も走行している中でドライバーが目をつぶったり操作不能の状態を作り上げたりする行為はするべきではないということで、作動スイッチを押すかたちで進められた。

 ちなみに同乗試乗が行われたのは内閣府のお墨付きのコースであり、後方をCX-8が伴走して万が一の場合に備え、さらには運転中のドライバーに質問することを禁じるという警察の指導を踏まえ、リヤシートに別の技術者の方が乗り込んで説明したり質問に応えてくださる、という万全の態勢が敷かれていたことを添えておく。

 片側2車線〜3車線で、最初は中央車線を走行中に作動スイッチをON。するとまず車室内で警告音が鳴り、ダッシュボード中央のモニターに「ドライバーの異常を検知しました」と文字情報が浮かび上がる。

 続いてホーンの断続音(今回は室内のみに音を流すカタチ)とハザードとブレーキランプの点滅で周囲に異常事態であることを知らせ、車内には「ドライバー異常のため、安全なところまで自動で走行し、停車します」というアナウンスが流れる。

 その状態のまま徐々に速度が下がっていき、ゆっくりと正確に車線を左に移し、左側に停車、自動的にヘルプネットへの通信を開始する(今回はモニターへの表示のみ)。停車位置も左側ベタベタに寄せるのではなく、助手席や後席の乗員が乗り降りする余地を適切に残した状態を保っている。

 次はもう少し複雑で、左側に停止車両や路上駐車などがあるエリアで作動スイッチをON。同様に周囲や車室内に状況を伝えながら、クルマは少しの間そのまま安全に停車できる場所を探しながら走行を続け、停止車両が途切れるところまで速度や向きを調整しながら進んだ後に、自動的に停車。

 さらには往復2車線が大きくカーブするところで作動スイッチを押したときには、曲がる手前に交通量の少なそうな脇道があることを探り、そちらに入って交差点から少し距離を置いて停車。しかも、脇道に入るところの横断歩道では一時停止をして、歩行者などが来てないことをしっかり確認してからゆっくり走り出しての停車、である。

 ちなみに装置が作動してる状態で赤信号に遭遇したときには、走行していた車線で停車し、ヘルプネットへの通信作業に入る。この場合には、クルマは再スタートはしないのだという。システムが周囲の交通環境などと照らし合わせながらもっとも安全だと判断するところに停車する、というわけだ。

 システムが作動している間は、車室内には「減速します」「100m先に停車します」「停車します」というようなアナウンスが流れ、同乗者は次の動きが判りやすいし、クルマの走行から停止までの一連の動きも素晴らしくスムース。不安感を減らしてパニックにならないような配慮もたっぷりとなされていることが感じられた。

 そしてもうひとつ、停止している車両を用いての異常検知、異常予兆検知の様子も体験させていただいた。

 シートに座って目を閉じる。あるいは気絶した想定でクビをガックリとうなだれる。すると即座にシステムが立ちあがる。

 また、システムとつないだ外部モニターで運転席に座ってるドライバーの視線を確認することもできた。例えば眠くなってくると人は能動的にさまざまな方向へ視線を動かすことが次第にできなくなり、目立つところばかりを注視してしまうような受動的な動きになってしまうのだが、そうした状態もシステムがしっかり検知していることがはっきりとわかった。

 何かがあってから対処に移るのではなく、何かがある前にしっかり察知して対処に移る、という考え方が理解できるのだ。

 ドライバーに安楽を与えるオート・パイロットであるが、マツダが重視してるのは万が一の事態を避けるためのコ・パイロット。交通事故をゼロに近づけていくための、素晴らしい提案だと思う。クルマを自分で操縦することが何より好きな僕だけど、これは自分のクルマにも欲しい技術だな、と素直に感じられたのだった。


嶋田智之 SHIMADA TOMOYUKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
2001年式アルファロメオ166/1970年式フィアット500L
趣味
クルマで走ること、本を読むこと
好きな有名人
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