運転下手は「ドラポジ」の可能性も! たかがシートやステアリングの調整でドライビングは劇的に変わる (1/2ページ)

この記事をまとめると

■正しいドライビングポジションだとクルマがきっちり素直に動いてくれる

■リラックスできてるつもりのルーズな姿勢は身体が安定しないため実は疲れる

■正しいポジションならシフトやステアリングなどを無理なく滑らかに操作できる姿勢になる

クルマを自在に操るためには正しいドラポジが望ましい

 自動車ライターという職業柄、触れたことのなかったクルマに初めて乗り込んだり、同じ現場で何度も違うクルマに乗り換えたり、ということが日常的にある。パッと乗り込んでサッと走り出したらスマートに見えるのかも知れないけど、僕はドアを開けてから走り出すまでにちょっとばかり時間がかかっちゃうことが多いから、モタついてるように思われるかも知れない。

 でも、そう見えたところでちっとも構わない。なぜなら、逆にあえてそこに時間をかけているようなものだから。どういうことかというと、ちゃんとクルマを操作することのできる姿勢、つまり自分のドライビングポジションが作れていないまま走るのがイヤなのだ。

 テキトーに合わせただけで走り出すと、ドライビングにかなり違和感があって自分の動作のひとつひとつがいちいち気になるし、何より狙ったとおりにクルマが動いてくれない。だからシートの前後の位置、座面の高さや角度、シートバックの角度、ステアリングの高さや奥行きなど、調整できるところをすべて、納得のいくところまで調整する。

 ドライビングポジションは重要だ。免許をとってしばらくは僕もテキトーに合わせて何となくラクに思える姿勢で走っていたのだけど、自動車メディアで仕事をするようになってプロのレーシングドライバーに運転のための正しい姿勢を教わって走ってみたら、驚いた。それまでちょっとダルで思ったように動いてくれないと思ってた自分のクルマが、シートを1段階前にしてシートバックを2段階ほど起こして走ってみたら、別のクルマに乗り換えたかと思えるほどキッチリ素直に走ってくれたからだ。

 それまではクルマが曲がらないんじゃなくて自分のステアリング操作がスムースじゃないせいでちゃんと曲げられてなかったのであり、加速が1テンポ遅いんじゃなくて自分のアクセルを踏み込むタイミングが1テンポ遅かった。つまり、適切な操作ができてなくて、それはドライビングポジションに起因する問題、ということだったのだ。

 のちに何年かレースを囓ることになったのだけど、そのときに何度自分のドライビングポジションを変えてみたことか。若造だったころ、僕はいったいどれだけルーズな姿勢で運転してたのだろう……? と思い出して苦笑いしたりもするけど、同時にそんな状態で峠を攻めたりしてた無知・無鉄砲ぶりに鳥肌が立ちそうにもなる。

 たとえば、シートに座って腰を少し前にずらし、シートバックを寝かし気味にして走ると、何となく身体がリラックスした状態であるように感じるものだ。でも、クルマの運転席のシートは、ソファじゃない。ソファの上に座っていても、加速や減速はないし、遠心力に振り回されたりもしないでしょ? でもクルマのシートは違う。加速をすれば大なり小なり身体は後方に動くし、ブレーキを踏めば前方に動く。コーナーを曲がれば身体はコーナーの外側に向かってズレていく。

 ルーズな姿勢でいると、どうなるか。シートにしっかり腰が収まっていない状態では、前後左右のクルマの動きに対して身体の押さえが利きづらく、シートのなかで動きがちになる。背もたれを寝かし過ぎるとステアリングを握る腕が伸びきって素早く自在な操作がしづらくなるうえ、遠心力が働くと操作しきれない状態にもなる。そんなふうに姿勢が崩れていると、膝や足首の角度も崩れてしまい、ペダル操舵に遅れが出たり強く踏み過ぎたりすることになる。ついでにいっておくと、自分ではリラックスできてるつもりのルーズな姿勢は身体が安定しないため、じつは走れば走るほど身体が疲れていく。

 また逆にステアリングを抱え込んでしがみつくような姿勢で走ると、ステアリングを握る腕の動きに自由度がなくなって、スムースに操作することができない。シートバックにしっかり背中がついてないと、肩にも首にも腰にもストレスがかかる。

 つまり、崩れた姿勢のドライビングには、いいことなんてひとつもないのだ。……ルーズな座り方はカッコいい? いやいや、運転が本当に巧みな人たちは、ちゃんとしたドライビングポジションができてない人を、それだけで「運転のヘタなヒト」と見なす。そんなふうに思われるのって、カッコいいことか?


嶋田智之 SHIMADA TOMOYUKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
2001年式アルファロメオ166/1970年式フィアット500L
趣味
クルマで走ること、本を読むこと
好きな有名人
-

新着情報