ホイールベースを延長したロングボディ! 屋根のないオープンカー! クルマの体幹「ボディ剛性」は問題ないのか? (1/2ページ)

この記事をまとめると

■クルマのボディ剛性について解説

■考慮されるようになったのは1980年代

■現在、目標として設定した車体剛性は100%に近い確率で達成が可能

ボディ剛性が考慮されるようになったのは1980年代

 ひとつの車種シリーズのなかで、ホイールベースを伸ばしたロングボディ車の設定があるモデルを目にすることが出来る。よく知られているのは、メルセデス・ベンツSクラスのロングボディ仕様だろう。車両全長が5m、車両全幅が1.9m、車両重量は2トンを超す威風堂々、小山のようなモデルだが、標準ボディのホイールベース3105mmに対し、ホイールベースを110mm延長した3215mm仕様のロングボディ仕様車が用意されている。

 老婆心ながら、標準仕様車からのホイールベース延長は、そのことで捻り/曲げ剛性が不利になるのではないか、と考える人がいるかもしれない。標準仕様で設計されたボディなら、ホイールベースの延長は車体剛性の低下を招くのではないか、という不安である。

 同じようなことは、屋根付きの車両をベースにするオープンボディのモデルでも懸念材料となる事柄である。A/B/C 3本のピラーとルーフによって得られていた車体上部の剛性が、屋根を取り去ることでボディ上面が開口状態となり、剛性が低下(不足)しているのではないかという疑問である。

 ボディ剛性が、明確に車両設計で考慮されるようになったのは1980年代のことだ。運動性能、とくに走行中のサスペンションを正しく機能させる上で、支持剛性が必要不可欠なことが判明し、捻れないボディ(捻り剛性)、たわまないボディ(曲げ剛性)の実現が急がれるようになった。同一シリーズのモデルで、1980年初頭の車両とモデルチェンジを経て進化した1980年代終盤の車両を乗り比べてみると、歴然とした剛性感の違いを感じ取ることができる。また、コンピュータシミュレーション技術が進化したことで、2000年代の車両は、設計段階で実際のボディ剛性が確認できるまでになっている。

 ところで、車体を設計する際に目指すボディ剛性は、当然ながら完全剛体ではない。そもそも自動車のボディで完全剛体はありえず、また完全剛体を目指す必要もない。設計する車両の重量、サイズ、形態などを前提に、現行技術(鋼板プレス材、溶接によるモノコック構造)で実走行に支障が生じないレベル(快適性の確保なども含まれる)が目標となっている。


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