大変な割りに稼げないと「若者」が敬遠! 乗務員の平均年齢が「ほぼ60歳」のタクシー業界が抱える問題 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■報道でタクシー事故は目立つが、じつはタクシーが関連する交通事故は減少傾向にある

■高齢者でも再就職しやすいタクシー乗務員は高齢化が目立つ

■コロナ禍で高齢者乗務員の離職が目立つが若年層の新規雇用もままならず、深刻な状況だ

タクシー乗務員は20時間乗務の隔日勤務

 365日、24時間運行されているのがタクシー。都内ではコロナ禍前にはなるものの、1台あたりのタクシーの年間総走行距離は10万km前後が目安になるともいわれていた。タクシー乗務員の勤務体系は途中休憩があるものの、連続20時間ほどの乗務となる隔日勤務が一般的。朝車庫を出て、翌日未明に車庫に戻るのがオーソドックスな勤務体系となる。

「午前4時や5時ぐらいにタクシーを運転している乗務員は、その多くが目は開いているが、眠気との闘いはハンパない」といった話も聞いたことがある。「昼間活動し夜寝る」というのは人間の基本的な部分であるので、どんなに隔日勤務に合わせて睡眠をとったとしても、深夜や未明に眠くなるのは人間の性なのである。これをどれぐらい自己管理できるかがプロドライバーの腕の見せどころでもあるのだ。車庫へ帰る途中に耐え切れずに、停車可能な場所にタクシーを停めて仮眠を取ってから車庫へ戻るということもあるようだ。

 しかし、これが夜中に万収(料金が万円単位になる長距離利用)のお客を乗せると、途端に目がシャッキリするそうだ。筆者も、高速代含めて都心から2万円弱となる自宅まで、深夜タクシーで帰ることがたまにある。あまりタクシー利用客のいないようなところで、コンビニのレジ袋を提げて夜中タクシーを停めると、乗務員はたいてい近場の利用と判断する。しかし、筆者が40kmほど先の行き先を告げたとたんに乗務員の表情は急に変わり、道中は乗務員からの話かけがとまらないといったことがよくある。しかも、車庫へ未明に帰っても、本当は疲れているのだが、気分が高揚して(当然稼ぎもよくなるので)、疲れを忘れるものだと聞いたことがある。

 プロドライバーであるタクシー乗務員が運転するタクシーが関連する交通事故はメディアにも取り上げられやすいので、タクシーの交通事故は多いようなイメージを持たれる人も多いだろう。国土交通省自動車局による、「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会報告書(令和3年年度)」資料の「事業用自動車の交通事故統計(令和2年版)」によると、令和2年におけるタクシーの交通事故発生件数は7459件、そのうち軽傷事故が6959件、重傷事故484件、死亡事故16件であった。令和2年の交通事故総件数は30万9178件なので、全体に対しタクシーの事故は約2.2%(タクシーやバスなど事業用車両全体の事故件数は2万1871台となる[総事故数に対し約7%])となっている。

 タクシーの交通事故件数の推移を2011年から2020年まで見ても、一貫して事故件数は減少傾向にある。2021年の統計においても、新型コロナウイルスの全国的な感染拡大により、タクシーの稼働台数自体が極端に少なくなっていることもあり、引き続き減少傾向が続いているものと考えられる。

 一般社団法人・全国ハイヤー・タクシー連合会による、「タクシー運転者賃金・労働時間の現況(令和2年 賃金構造基本統計調査)」によると、2020年の全国でのタクシー乗務員の平均年齢は59.5歳となっている。「高齢な乗務員が目立つので、その高齢乗務員が関係する事故が多いのでは」と考える人もいるが、それは一概にはいえない。

 タクシーを運転しているとき、とくに道端で手を挙げたお客を乗せる「流し営業」の多い東京などの大都市では、基本的にタクシー乗務員はわかりやすくいえば「わき見運転」をしているといえよう。まっすぐだけ見ていれば、道端で手を挙げタクシーを利用する意思を見せている人を見逃してしまう。完全にわき見しているわけではないが、若干歩道側に視線をオフセットして運転しているのである。

 そのため、空車のときは左側車線をゆっくりと走るのが「タクシー走り」の原則となっている。ちなみに、新人乗務員でそれほど乗務回数を重ねなくても、街を流しているときに、歩道にいる多くの人のなかからタクシーに乗ろうとする人が光って見えてくる(オーラを感じる)そうである。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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