採用車が爆増の最新装備3つ! クルマ好きなら覚えておきたい「そもそもの仕組み」 (2/2ページ)

今注目されている技術もじつは30年以上前からあった!

 日常的に活用したいブレーキの最新トレンドといえるのが「オートホールド」などと呼ばれるメカニズムだ。信号待ちなどで停止したときにブレーキペダルから足を離しても停止状態をキープしてくれる便利な機能だが、こちらも作動の仕組みを知ると、単独で機能している訳ではないことが理解できる。

 電動パーキングブレーキとセット的な機能となっているため、オートホールドはパーキングブレーキによって停止維持をしていると思いがちだが、実際には四輪でブレーキをかけて停止している。簡単にいうと、オートホールド作動時には、ブレーキペダルから足を離しても油圧を抜かないように制御していると理解できる。

 ブレーキペダルを踏まないでブレーキを作動させることができるのは、ABSやESC(横滑り防止装置)と大きく関係している。前述のようにABSというのは四輪それぞれのブレーキ力を独立して「抜く」ことで実現している機能であり、逆にESCは必要に応じて四輪別々にブレーキを「かける」機能となっていると理解できる。ESCが義務化されている現在のクルマでは、ESCとABSは一体化して制御されているため、そうした安全機能の普及がオートホールドを実現しているといえる。

 ABSやESCは標準装備となっているのに、なぜオートホールドが電動パーキングブレーキとセットの機能になっているのかといえば、そこにはバックアップ的な安全思想がある。たしかに信号待ちで停車したときに、ブレーキペダルから足を離しても停止状態を維持するだけであれば電動パーキングブレーキは必要ない。しかし、その状態が数分も続くとESCモジュールでは確実に停止を維持するのは難しい。そのため、時間が経つと電動パーキングブレーキを作動させる必要がある。こうして安全に停止維持を続けるのが、一般的なオートホールドのメカニズムだ。

 オートホールドほどではないが、最近とみに増えてきているのが「4WS」だ。「フォーホイールステアリング」の略称となる4WSは、日本語で表記すると「四輪操舵」となる。前輪が操舵するのは、駆動方式に関わらずデファクトといえるので、4WSは後輪にも操舵機能を与えるメカニズムを指していると理解できる。

 前後輪で操舵できるとなると、真横に動けるような挙動を期待したくなるが、パッケージ的な理由からそれは難しい。フロントエンジンの乗用車プラットフォームを想定した場合、仮に後輪のキレ角を前輪と同じくらいにするにはホイールハウスを大きくとる必要が出てくる。結果として後席やラゲッジが犠牲となってしまう。それは現実的ではないため、量産車に採用される4WSにおいては後輪のキレ角は数度レベルに抑えられていることがほとんどだ。

 そして4WSを説明するときに必須となる用語が「同位相・逆位相」というもの。同位相というのは前輪と同じ方向に後輪を操舵している状態で、逆位相はその反対を意味する。単純化すると同位相は安定性につながり、逆位相は小まわりに有利な制御といえる。

 結果として高速走行時には同位相を主体に制御、極低速時には逆位相を積極的に活用するという風になっていることが多い。

 なお、オールドファンにとっては元祖4WSという印象の強い日産HICASの初期メカニズムは油圧でサブフレームごと動かすというものだったし、同時期にホンダが採用した4WSはフロントからシャフトで繋ぐというものだったが、近年の4WSは電動を基本としている。

 主流となっているのは後輪に電動ステアリングラックを備えるタイプだが、サスペンションを構成するトーコントロールアームに可変機能を与えることで微小角度の4WS機能を実現している例もある(例:ホンダのプレシジョンオールホイールステア)。

 後者のシステムであれば左右で異なる位相に操舵することもできる。そこにブレーキ制御などを組み合わせれば、人間には不可能なレベルでの車両挙動を生み出すことも理論的には可能だ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
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