最高速度120km/h導入で速度差は最大70km/hって危険じゃない!? 高速道路の最低速度50km/hを引き上げなくてもいいのか (2/2ページ)

まばたきしてる間に車間は20mも縮まる

 その速度差を、ではどう意識すればいいのか。

 たとえば、目のまばたきは、0.1秒前後だといわれている。瞬きをしている間は、短時間とはいえ目をつぶっているのだ。時速120kmで走っているとき、1回の瞬きで約3.3m先へ進むことになる。時速50kmでは、約1.3mだ。一瞬の出来事の間に、これだけ移動距離が違う。

 より高速で走っているときの瞬きひとつで、前を走るクルマの速度が遅ければ、追突してしまいかねない懸念がある。したがって、時速50kmのクルマの進み具合は3分の1ほどゆっくりで、逆にこちらは3倍近く先へ進んで行ってしまうことを常に意識し、運転する必要がある。

 ちなみに、アウトバーンをもし時速200kmで走っていたら、瞬きする間に5.5mも先へ行ってしまうことになるから、それくらい遠くの先読みをして運転しなければ安全を保障できないということだ。

 新車はどんどん高性能になり、アクセルペダルひと踏みで簡単に速度が上がり、同時にその速度をあまり意識させないほど操縦安定性が向上している。その一方で、少し前の年式というだけでなく、旧車のようなクルマも高速道路を走っている。クルマの性能という点においても、安全に安定して走れる速度が異なる交通環境に我々はいるのだ。それを一方的に、制限速度の最高速度が高くなったら最低速度も上げるべきとする考えは、短絡的だと思う。

 安全は、単に速度の高低だけでなく、運転者の自覚こそが大切だ。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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