バス・トラック・タクシードライバーの時間外労働時間の上限が960時間に! 労働環境を改善するための施策がより「業界を苦しめる」ワケ (2/2ページ)

安全に稼げる環境づくりが求められる

 稼ぎにくくなった仕事というイメージとともに、従事する際のリスクが高いというイメージも定着している、まずは交通事故である。ケースにより警察に身柄確保されれば実名報道されるというリスクもある。また、乗務員当事者がケガや場合によっては事故で死亡するケースもあるだろう。座りっぱなしで休憩があるものの連続20時間ほど乗務していれば身体への負担も多く、乗務中に病死するということもそんなに珍しくない。そしてタクシー強盗など犯罪に遭遇するケースも多い。最近では稼げるか稼げないかではなく、リスクの高い仕事として家族が従事することに反対するケースが目立っている。バスの乗務員も事故というハイリスクを理由に家族が反対するケースが多いと聞く。

 今回の2024年問題はリスク低減という効果は期待できるかもしれないが、いま以上に満足のいく収入が期待できないケースが発生する可能性は高いし、そうなれば募集をかけても新規雇用はなかなか進まず、結果として街なかを走るタクシーそのものが少なくなるなど、その波及効果は読みきれない部分が多い。

 トラックや観光バスというものは、安全運転を支援するさまざまなデバイスが新車では充実するようになってきている。タクシーでも法人タクシーでよく使われる専用車となるトヨタJPNタクシーでも、その内容は別としても衝突回避支援パッケージ(トヨタセーフティセンス)が標準装備されているが、路線バスについては安全運転を支援するデバイスがいっさい装着されていないのが現状。

 いまでは乗用車でも当たり前となっている自動ブレーキを装着すると、万が一自動ブレーキが作動してしまうと、客席にはシートベルトはないし、立って乗車している人もおり車内転倒事故を誘発する可能性もあり、なかなか導入に踏み切れないようである。

 そのため路線バスの乗務員募集を行うと、本人は納得して応募しているのにその家族は「安全運転支援デバイスもない車両を運転させるわけにはいかない」と猛反対してきて話がご破算になることもあると聞いている。単純に労働時間を厳密に管理するだけでは問題の解決はまず無理だろう。安全に従事できる環境整備、そして稼げる仕事にすることが、何よりも安全な乗務環境の実現の特効薬となるのである。

「20時間近く乗務して思うように稼げないなか車庫に帰ると、その時の疲労はかなりきついようですが、ロング客を当てたりして予想以上に稼げた時は疲れや眠気などは吹っ飛ぶと聞いたことがあります」とは事情通。稼ぐために過重労働を強いることは許されないことだが、2024年問題はさじ加減が少々アンバランスのようにも見えてしまう。自動車運転にかかる業務だけでなく、いまはどの仕事でも稼げないという事実による労働意欲の減退が日本中にまん延しており、それが負のスパイラルの要因のひとつになっているとも感じている。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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愛車
2019年式トヨタ・カローラ セダン S
趣味
乗りバス(路線バスに乗って小旅行すること)
好きな有名人
渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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