夏商戦に「特別仕様車」が出ないのは生産現場の余裕のなさの表れ! 特別仕様車の歴史とイマドキの中身 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■特別仕様車の歴史について解説

■1980年代後半から90年代に注目されるようになった

■現在はモデル末期に設定されることが多い

バブル期は特別仕様車が人気を集めた

 6月に入り夏商戦がスタートした。過去には6・7月は「夏のボーナス商戦期」と呼ばれていたが、いまでは世の中における働き方の多様化もあり、ボーナスという表現は用いずに「夏商戦」などと呼んでいる。本来は購入特典や値引き額のアップなどを武器に販売促進を行い、期間内の新規登録(軽自動車は届け出)台数ベースで販売実績の積み増しを行うのだが……。現状では回復傾向にあるとはいえ、受注後すぐに新規登録して短期間で納車できる車種はメーカーを問わずかなり限定的となっており、期間中に受注をとっても夏商戦の販売実績となることはまず期待できない。

 そのようなこともあり販売現場もなかなか盛り上がりに欠けた印象が強いのだが、それでも各ディーラーの本部はセールスマンに対して、夏商戦ということを強調し、実績アップを要求してくるという。「現状では我々個々での努力ではどうしようもないのが現状です。夏商戦前に受注をもらったのに納車ができない受注残車両はかなりの台数となっていますが、単に生産が遅れているというだけでなく、いつくるかわからないのです」とは現場のセールスマン。

 6月2日にスズキは半導体を含む部品供給不足を理由に、湖西工場と相良工場で6月5日~7日の3稼働日の操業を停止することを発表している。納期遅延車といえばトヨタ車が目立つが、トヨタ以外のメーカーの生産現場でもまだまだ不安定な状況が続いているのである。

 このような現状であるので、本来なら夏商戦などの増販期には購買意欲を煽る意味もあり、特別仕様車が設定されたりもするのだが、余力のない生産現場の現状を見れば特別仕様車を新たに設定するような余裕は現状ではないともいえるだろう。

 特別仕様車が新車販売の中心となっていたのは、80年代後半から90年代にかけてといえるだろう。80年代後半から90年代初頭にかけ日本はバブル経済に酔いしれ、初めてマイカーを持つといった新規受注が殺到し、新車販売は空前の盛り上がりを見せていた。しかし、一部の上級車を除けば、オーディオ(当時はカセットテープ)やエアコンはオプション扱いとなっていた。そこで、カーオーディオやエアコンを特別に標準装着させた、買い得感の高い特別仕様車が設定され、それが消費者の間でも注目されるようになっていった。単にオーディオとエアコンを装着するだけでなく、専用シート表皮など特別仕様車にしかないまさに特別な装備も注目された。

※写真はイメージ

 軽自動車でも主に女性をターゲットにした特別仕様車をどのメーカーでも設定し、可愛らしい愛称をつけ、専用デカールなどを貼ったりしたオシャレさを強調したものとなっていた。ただ、男女平等参画社会の実現やジェンダーフリーが叫ばれるいまどきに、このような「女性のための……」的な部分を強調した特別仕様車を出すことはまずできないだろう。そもそも軽自動車自体はいまだになんとなく女性ユーザーを意識したものとなっているが、若い世代の男性でもカスタム系が中心になるだろうが躊躇なくマイカーとして乗っているし、セミリタイヤやリタイヤ層のニーズも高いので、ある意味ジェンダーフリーが進んでいるといっていいだろう。

 エアコンが当たり前のように標準装備され、音楽は自分のスマホをつなげて聞く時代となれば、ちょっとやそっとの特別装備でユーザーの満足感が向上するわけがない。昭和のころのノリの特別仕様車が衰退していったのも、「好みのオーディオを選んで装着したい」などユーザーニーズの多様化があったことは否定できない。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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