サクラやeKクロスEVのような「低価格EV」でも中国が台頭! 日本メーカーの「のんびり感」に感じる不安

この記事をまとめると

■よく日本はEVの普及が遅いと言われる

■しかし日本の自動車メーカーに技術がないわけではないという説も

■世界各国と日本のEV事情について解説

日本は機が熟するのを待っているだけ?

 世界的にBEV(バッテリー電気自動車)が普及しているなか、日本国内での普及は世界に比べれば遅々として進んでいない。良質なHEV(ハイブリッド車)が各日本メーカーではラインアップされていたり、筆者の実体験でも最新の日系ブランドでは、ICE(内燃機関)車であっても燃費はHEV並みであるし、環境性能もかなり高まっているなか、充電インフラの整備がなかなか進んでいないこともあり、いますぐにBEVに乗る理由がないということも大きいかもしれない。ただ、BEVに乗りたくても日本国内で販売されているBEVの多くは、欧州や韓国、中国メーカー車ばかりで、日本メーカー車での選択肢がかなり少ないことも大きく影響しているのは間違いないだろう。

 多くのメディアが日本メーカーのBEV対応の出遅れに注目しているが、その出遅れについて技術的には高いものがあり、すでに量産化もいつでもできるようになっているとする、「機が熟するのを待っているだけ」とする説があるのもまた事実。外野として見ていると不安ばかりなのだが、日本メーカー製BEVは本当に満を持してこれからドンドン登場してくるのかは、個人的にはまだまだ懐疑的に見ている。

 ただ、筆者はある日系メーカー関係者から、「明らかにここまでのスピードで世界的にBEVが普及するとは思えなかった」とも語ってもらったことがある。

 世界一の自動車市場である中国では、2035年にICE車の全面販売禁止を行うとしているが、これは純粋なICE車のことであり、HEVは引き続き販売できるようなので、日本が得意とするHEVはここへきてさらにブラッシュアップされている。その面では日本車が全面的にヤバイということでもないようにも見える。また、日本政府は脱炭素社会の切り札として水素戦略を策定しており、すでにトヨタではFCEV(燃料電池車)の「MIRAI」や、FCEV路線バス「SORA」を世に送り出している。水素燃料分野では日本及び日本メーカーは存在感を見せているともいえよう。

 そうはいっても、世界的には現状でもある程度のBEV市場が形成されてしまっているのだから、日系メーカーがそれにアンタッチャブルというわけにもいかないだろう。

 BEVのラインアップに欧州メーカー、とくにドイツ系メーカーは積極的な動きを見せている。欧州以外の地域では欧州ほど前のめりでBEV車普及を進めているわけではないので、世界市場を考えれば、今後新規投入車種はなくとも、既存ICE車のモデルチェンジなどは当面行わなければならないだろう。BEVの積極投入を進めながら、ビッグマイナーチェンジ程度になるかもしれないが、既存ICE車のモデルチェンジを進めるのは、BMWのように、たとえば7シリーズがあり、その派生となるi7(BEV)といったケースでもない限り、メーカーへの負担はかなり大きいものになるだろう。日本メーカーはこのように、ICE車のモデルチェンジとBEVのラインアップ拡大を並行して行うことへの負担を嫌った結果、現状のようなBEVへの出遅れイメージが強まってしまったのではないかという話もある。

 戦略的に動いた結果がいまの日本メーカーの状況であるならば安心したいところだが、BEVでは日本メーカーよりはるかにスピード感のある中国メーカー車両と、日本だけでなく世界市場で日本車は今後競り合うことになる。筆者としては、日本メーカー製BEVの突破口として、日産サクラのような航続距離などスペック的にはやや抑え気味であっても、価格面で魅力の高い、ローコストBEVしかないと考えていたのだが、その分野でもいま中国系メーカーが急速にモデルラインアップを充実させている。中国系だけでなく韓国系メーカーも、日産サクラの日本国内での大ヒットに触発されたとの話もあるようだが、それだけ日産サクラの日本国内でのインパクトは大きかったのだ。現状では、東南アジアあたりを見ていると、中国メーカーがスピード感を持ってローコストBEVでも主導権をとろうとしているように見える。

 スピード感に難のある日本メーカーにとって、機が熟するのを待つ時期はそろそろ終わりを迎えているようにも見えるのだが、日本メーカーはそうは見ていないのかもしれない。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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