LEDランプの普及で低圧ナトリウムランプは役目を終えた
■なぜオレンジの照明が絶滅しかけているのか?
そんな特徴が活かされて、ほとんどのトンネルには「ナトリウムランプ」が使われるというところまで広がりましたが、いまでは採用され続けている箇所を探すほうが難しいという状況になっています。それはなぜなのでしょう?
まず第一に、「排気ガスがクリーンになった」という理由が挙げられます。もともとが排気ガスが立ちこめるなかでの視認性確保という目的で採用されていたので、排気ガス自体が少なくなったいまでは視認性の面での有用性はなくなってしまったという状況ですね。
そしてもうひとつの理由は、運用面でのメリットが薄くなったという点です。「ナトリウムランプ」の性能は実際に使われていた「低圧ナトリウムランプ」で、消費電力が約450W、寿命が約9000時間です。その後に採用された効率の良い「高圧ナトリウムランプ」は消費電力が約300Wで寿命は2倍以上の2万4000時間と高効率になりましたが、それでも年に一度の交換が必須だったようです。
それに対して、いま普及している「LEDランプ」は、消費電力が約100Wまで抑えられ、寿命は6万時間まで引き上げられていますので、効率の違いは比べるまでもないレベルに向上しています。
ちなみにいま現在では、「ナトリウムランプ」を製造しているところが激減しているようで、がんばって使い続けるより「LEDランプ」に交換した方が何かと有利という状況になっているようです。
■オレンジ色の有効性は視認性だけではない?
そんな理由で絶滅の一途を辿っていると思われるオレンジ色の照明ですが、じつは一部の特殊な環境ではまだ有効に働いているところがあるらしいんです。
そのひとつは粉雪がしょっちゅう舞い散っているような山間部や雪国の一部地域です。排気ガスや濃霧の状況と同じように、雪の細かい粒子が舞っている状況では、照明の光が散らされて遠くに届きにくくなりますので、粒子に散らされにくいオレンジの光が有効に活用されます。
そしてもうひとつのポイントが「誘虫性が低い」という点です。「誘虫性」というのは虫を誘う効果の度合いのことです。虫は夜間に光を求めて集まる習性があることはみなさんご存じだと思いますが、その色味によって集めやすさが異なるようなんです。
ザックリ言うと、色味が白い(色温度が高い)ほうが虫を集めやすく、色味が赤い(色温度が低い)ほうは虫を集める特性が低いとのこと。
ということで、オレンジの光は白色の光より虫を集めにくいので、虫の多い山間部などではオレンジ色の照明を使うというケースがあるとのことです。
ちなみに光源の種類で比べると「LEDランプ」より「ナトリウムランプ」のほうが虫を寄せにくいそうですが、先述のように「ナトリウムランプ」は運用面で難があるため、いまはオレンジ色の「LEDランプ」が使われているようです。
ということで、オレンジ色のトンネル照明が使われていた理由と絶滅しかけている理由を紹介しましたがいかがだったでしょうか。
個人的には真っ白で明るすぎる印象すらあるいまのLEDのランプにはまだ馴染めない感覚もあったりして、オレンジの照明にたまに出くわすと「なんか落ち着く」という気分になるのでそちらのほうが好ましいと思っていますが、実際は事故率の軽減などを考えるとLED化は必然の流れでしょう。
ただ、オレンジの照明がまったく絶滅してしまったわけではないということなので、ひとまず気持ちを落ち着かせたいと思います。