この発明がなかったらいまの自動車はないでしょ! 「スゲー」しか出てこない自動車界の大発明5つ (2/2ページ)

最新技術は人々の悩みを解決してきた

 エンジンメカニズムでいえば、ガソリンエンジンの運転状態を安定させた燃料供給システム、フロートチャンバー付きキャブレターの完成が見逃せない。ガソリンエンジンが自動車の動力機関として採用されたのは1886年。カール・ベンツによる世界初のガソリン自動車だが、動く乗り物の動力源であるエンジンに、ガソリン(混合気)を安定して送り込む装置としては、当時のキャブレターは未完成な状態だった。

 このキャブレターにフロートチャンバーを設け、常に安定した状態で燃料を供給できる装置に完成させたのが、ダイムラー社のマイバッハだった。1894年のことで、マイバッハが考案したキャブレターは、現代のものとほぼ同じ基本構造を持っていた。

 自動変速機、ATも自動車の創生期に考案されたメカニズムのひとつだった。MTに対するATのように、運転操作の簡略化、自動化は、機械を操る人間にとっての永遠の課題となってきた。発案者はイギリス人のフレデリック・ウイリアムス。最初のイギリス製ガソリン4輪車(1896年)を作ったランチェスター3兄弟のうちのひとりで、複合型のプラネタリーギヤを使うプリセレクト方式の自動変速機を考案。このプラネタリーギヤ方式という言葉にピンとくる人もいるかと思うが、これにトルクコンバーター(流体継手)を組み合わせると、現代の標準的なATになる。いい換えれば、現在ATとして普及している装置は、じつは120年も前にその原型が作られていた。

 車両の方向変換性を上げるため、考え出された4輪操舵方式(4WS)は、陸上を走る自動車ならではのメカニズムといえるだろう。自動車は、通常、進行方向を変えるため前2輪に舵角を与えて向きを変えているが、車体に長さがあるため、最小回転半径が自ずと生じることになる。高速走行時には必要性のない小まわり性だが、車庫入れ(=駐車)、幅の狭い道での方向変換などを考えた場合、回転半径の大きなクルマでは切り返しが必要となり、車両の取りまわし性が悪くなってしまう。

 この問題を解決するため、後輪にも舵角を与えればより小さな回転半径が得られるようになる、という発想が生まれてくる。これが4輪操舵システムで、1980年代後半に一時注目されたが、幅広く普及することはなく、いつの間にか下火となったシステムだ。しかし、あえてここで4WSを取り上げたのは、低速域の取りまわし性だけではなく、制御の仕方によってハンドリング性能の向上に貢献するシステムとして活用されたからだ。

 4WSで後輪の舵角方向は、前輪と同相、逆相のふたつがある。同相の場合は、安定方向、向きが変わりにくい方向で作用し、逆相の場合は、小旋回性を促す方向、向きが変わりやすい方向で作用することになる。ここで取り上げるのは、日産が実用化したSUPER HICAS(スーパーハイキャス)で、最終的に電動システムに進化を果たしているが、高速走行時の初期応答性をよくするため、転舵初期には後輪を逆相転舵、向きが変わり始めたら旋回挙動を安定させるため今度は同相転舵へと動きを変える。

 後輪舵角量が大きかった初期の4WSは、さほど大きな意味を持つ操舵システムとはいえなかったが、後輪転舵の逆相/同相を瞬時に切り替え、車両に発生するヨーを効果的に活用した日産のスーパーハイキャスは、特筆に値するシステムだった。


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