一度積んだ荷物を下ろすハメに
このフリーペーパーを軽バンに積み込むには、パレットの山から運ぶことになるのだが、第一関門はその積まれ方。今回のフリーペーパーはピンホール積みや風車積みという方法で積まれていた。
この積み方は荷崩れしにくく、バランスが取りやすい方法なのだが、これが手積みとなるとじつに手間がかかる。すべてが同じ方向に並べられているなら、同じ場所に立ってどんどんと手に取ればいいのだが、ピンホール積みの場合は、徐々に自分の位置を変えながら積まなければならない。
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けっこう重い1束を持ちながらパレットのまわりをグルグルとまわることになった。そして30分後、無事に荷室はフリーペーパーの束でいっぱいになった。横に6つ✕縦に5つで30束。これを5段積み重ねたので合計で150束、1束が30冊なので合計4500冊だ。
ちょっと疲れてひと休みと思ったところで、フォークリフトに乗ったベテランオペレーターから声がかかる。
「そりゃダメだ~」
何事かと思って聞いてみると「タイヤ見てみ。パンクすっぞ」振り返ってみた軽バンのタイヤは見事に潰れ、車高もずいぶん低い。完全に過積載だった。
ここで計算してみよう。ひと束が4kg程度の束を150束積んだのだから、単純計算で600kgが荷室に載っている。そりゃ最大積載量より2倍近い重さの荷物を積めばタイヤも潰れるわけで……。結局、さっき積んだ荷物を再び手積みでパレットに降ろすという苦行を行うハメに。1回でたくさん積めば、その分積み込み回数が減るからラクだな、というのは甘い考えだったのだ。
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積んだときと同じくらいの時間をかけてパレットにフリーペーパーの束を戻している途中に、またさっきのベテランオペレーターから声がかかる。今度は何だ?
「これから配達でしょ。だったらなるべく高く積まない方がいいよ、クラフト包装は滑るから」
これはありがたいアドバイスだった。同じ100束を積むとしても、20束×5段で積むより40束×2.5段にしたほうが発進時に荷崩れしないからというのが理由だ。もし発進時に上の段の荷物が滑り落ちてしまうと荷物が痛むだけでなく、荷崩れに気が付かないままだとリヤゲートを開けたときに荷物が外へ落ちることが多いのだそうだ。
軽バンに荷物を積むだけでも、さまざまなノウハウがあるんだと感心すると同時に、わずかに触れた程度の作業ではあったが、物流の凄さを感じ取るには十分な出来事だった。