ミッドシップに4WD化となんでもあり! 過激で知られるグループBに魔改造の波を巻き起こしたプジョー205T16 (2/2ページ)

公道仕様は過激な見た目に反して乗るとマイルド

 そして、公道モデルはラリーカー同様、フルタイム4WDシステムも継承していました。センターは機械式デフ、加えてビスカスカップリングで各輪を駆動するもので、一説によれば前後37:63の設定(ラリーカーは調節機構つき)とされていたそうです。クワトロの45:55(諸説あり)に比べ、ミッドシップらしいセッティングといえるでしょう。

 また、ボディスタイルもラリーカーに準ずるもので、ルーフ後端のバタフライウィングと呼ばれる大仰なスポイラーを除けば、ほとんど同じだったといっても過言ではありません。ボンネットはフロントヒンジでガバっと開き、キャビンから後ろもボディパネルごと開くのはグループBホモロゲならではの風物詩(笑)ですが、さすがに路上の保安基準を満たすべく、公道向けのキャビンはスチールで構成され、そのほかは製造を担ったユーリエ(フランスでクルマ向けパーツや製造を担っていたエンジニアリング会社)が得意としたFRP。もちろん、ラリーカーはカーボンケブラーでより軽量化(900~910kg)を果たしていました。

 先のルノー5ターボもそうでしたが、205T16のインテリアもじつにシックで上質な作りとなっています。シートの出来はいうにおよばずで、サイドサポートが盛り上がったリクライニング機構付きで座り心地も極上品。試乗した際も、加速や乗り心地よりもシートの出来ばえに感動を覚えました。ダッシュボード、メーター、ステアリング、シフトノブ、そして3ペダルのいずれも専用品となっており、260km/h(カタログ上の最高速は220km/h)のスケールや油温や電圧などの追加メーターがその気にさせてくれること請け合いです。

 そんなホモロゲマシンですが、路上で試してみると意外なほどマイルドなマシンでした。大昔の試乗なのでうろ覚えですが、フルブーストでも加速は目がついていくし(カタログ上では0-100km/h:6.5秒)、オフセットしたミッドシップらしいクセのようなものも皆無。ようするに普通っぽかったような気がします。

 グループBホモロゲの夢を壊すようで申し訳ありませんが、この普通こそプジョーが、そしてトッドが企図した205T16のキャラかもしれません。


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石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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