この記事をまとめると
■セリカは1970年代に登場した初代から7世代にわたって販売された
■4代目のモデルは空気抵抗の少ないデザインとなっていた
■ベストデザインともいえる4代目は直線が美しいシャープな1台であった
復活も囁かれるセリカのベストデザイン
長寿モデルをはじめ、何代かに渡って販売されるモデルはそれぞれの時代を反映させたコンセプトが盛り込まれており、もちろんそれはスタイリングにもいえること。そこで、そんな各歴代のなかからあえてベストデザインを選んでみるのがこの企画です。何しろ個人的な意見ゆえ、苦情反論は受け付けませんので悪しからず(笑)。
●滑らかさとシャープさが融合した面構成
本シリーズ5回目となる今回取り上げるのは、トヨタのセリカです。生産が終わって久しいこともあり、長寿モデルのイメージはあまり強くないのですが、それでも1970年発売の初代から7世代に渡って販売されました。その初代である通称「ダルマ」をはじめ、各世代ともユニークかつ個性的なスタイリングでしたが、ここでは1985年に登場した4代目(T160型)をベストデザインとしたいと思います。
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トヨタ初のフルタイム4WDであるGT-FOURの設定や、トレンディ映画の劇中車として有名な4代目ですが、それ以上に注目するべきは「流面形、発見さる。」をキャッチコピーとした特徴的なスタイリングでしょう。
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何が「流面」なのかといえば、前後ブリスターを溶け込ませたじつに滑らかなサイドパネルや鏡面のようなボンネットフード、さらには大きくラウンドしたリヤガラスなど、空気抵抗係数0.31の磨き込まれた面構成なのかと。
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ポイントは、緩やかなカーブを描くキャラクターラインにピンストライプを加えることでシャープさを増し、それによってショルダー面がキリッと強調されている点。最近ではルノーのトゥインゴが同様の手法で個性を発揮していましたが、造形とグラフィックを巧く組み合わせた「妙案」です。
●流れるような面を引き締める手法
この流面ボディを成功させているのが、ボディ各所に施された引き締め役の存在です。たとえば、ホンダのプレリュードを想起させるブラックグリルは、平板になりがちなリトラクタブルランプを引き立たせるだけでなく、フロントビュー全体を精悍に演出します。
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また、ブラックアウトさせたリヤピラーはキャビンを引き締めるだけでなく、ラウンドしたリヤガラスと相まって先進感をアピール。さらに、1980年代らしくボディを1周するブラックのプロテクターも流麗なボディが緩まないよう大きな役割を負っています。
リヤでは、これまた80年代的な長方形のテールランプがモダン。90年代の「セラ」もそうですが、近未来的で流麗なボディをこうしたシンプルなテールランプでまとめ、ある種の実用感を与えている点が巧妙です。
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さて、「流面形」という文字からは滑らかで柔らかい造形がイメージされますが、この4代目の特徴はそこに直線や繊細でシャープなラインを組み合わせている点であり、そこがこの後の5代目と大きく異なるデザインと言えます。
だからこそ直線がもてはやされていた1980年代半ばでも受け入れられたワケで、その絶妙な味付けに担当デザイナーの才能が見て取れるのです。