この記事をまとめると
■中国では兄弟車の名前に過去存在したモデル名を用いることがある
■漢字でも用意されることがあるので当て字を使うケースも存在する
■使用する背景には商標上の都合であったりブランディング上の作戦が考えられる
馴染みのある名前がまだまだ現役
海外の自動車ショーにある日系ブランドブースを訪れると、旧友に久しぶりに会ったような、懐かしい車名に遭遇することがある。第21回上海モーターショー(第21回上海汽車工業展覧会)でのホンダブースがまさにそれであった。
ホンダは現地合弁会社として広汽(広州)ホンダと東風ホンダがある。どちらかで日本でもラインアップされている車種を展開すると、もう一方ではその兄弟車をラインアップすることが多い。そのようなときに過去に使用していた車名が使われることがある。
東風本田 LIFE画像はこちら
たとえば、広汽ホンダではアコードをラインアップしているので、東風ホンダではその兄弟車としてインスパイア(英仕派)がラインアップされている。一方東風ホンダでシビックをラインアップしているので、広汽ホンダではインテグラ(型格)を用意している。ちなみに「英仕派(インスパイア)」という漢字車名は当て字となる。一方でインテグラの漢字車名は「型格」で、これは当て字ではないようで、「スタイル」という意味となる。インテグラの指す「統合する」といったような意味ではないので、この漢字車名の由来ははっきりしなかった。
東風本田 インスパイア画像はこちら
ちなみにトヨタでは広汽(広州)トヨタにて、アメリカで人気の高い海外市場向けミニバン「シエナ」をラインアップしているが、一方の一汽トヨタ版兄弟車は「グランビア(格瑞維亜/当て字)」となっている。そんな中国ではかつて新旧併売が当たり前のように行われていた。要するに新型が登場しても先代型が継続販売されていたのである。
広汽豊田 シエナ画像はこちら
シリーズ10代目、日本でのカローラ・アクシオとしては初代が中国でデビュー(日本では2006年デビュー)しても、中国では9代目が継続販売されていた。ただし、10代目の漢字車名は卡羅拉(当て字/現行型も同じ)なのに対し、9代目は花冠(車名の意味である花の冠を漢字で表現)としていた。そのため当時は原稿執筆や編集作業時には、「花冠のほう」などとして、モデルの違いをやりとりしていたことを覚えている。
広汽豊田 卡羅拉画像はこちら
南アフリカでラインアップされるトヨタ車には懐かしい車名が多いのも有名な話。スズキ・セレリオをベースとしたコンパクトハッチバックの車名はヴィッツ、スズキ・バレーノベースのモデルはスターレット、スズキのコンパクトMPVとなるエルティガをベースとしたモデルはルミオン、そしてスズキ・フロンクスベース車はスターレット・クロスと名乗っている。
トヨタ・スターレットクロス画像はこちら
過去モデルの車名を使うのは、新しい車名を考えると商標登録する際にすでに存在するかなど、商標登録上問題ないかどうかの確認がかなり煩雑になると聞いたことがある。また、新規に車名をつけるよりは過去モデルの車名をつけたほうが、消費者も馴染みやすいということもあるようだ。いまは疑問があれば検索して調べる時代。過去に同じ車名を名乗っていたモデルがどんなものであったかも、すぐに調べることができることも大きいかもしれない。
トヨタ・ヴィッツ(3代目)画像はこちら
中国では欧文車名と漢字車名を用意するので、単に車名復活するだけではなく、漢字車名では当て字なのか、意味を表現しているのかなどを探ることもできるので、筆者はそれを楽しんでいる。