この記事をまとめると
■燃費は出費に直結するので重要な要素となっている
■同じ気筒数で同じ排気量のエンジンであっても燃費はそれぞれ異なる
■燃費を追求する上で重要な数値は熱効率だ
燃費の良し悪しは何で決まる?
クルマがもつ「燃費性能」は、オーナーにとっては大きな関心事である。燃費の良し悪しは出費に直結するため、どうしても気になってしまうのだ。かつては、高性能の裏返しとして「オレのクルマはガスを食うんだよ」なんて自慢げに話す人もいたが、現代の価値基準で判断すれば、明らかに的外れなコメントといえるだろう。
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燃費とは、文字どおり「燃料消費率」の略で、基準燃料量(1リッター)でどれだけの距離を走れるかを表した言葉である。当然、より多くの距離を走れるほうが好燃費となり燃料代の出費を強いられるユーザーにとって、好燃費は非常にありがたいことになる。
では、燃費性能はどうやって決まるのか、この点について少し考えてみよう。
燃費、すなわち燃やした燃料でどれだけの距離を走れるか……ということで、基準燃料量に対して多くの距離を走れると、より優れた燃費性能という表現になる。そして、消費燃料量は排気量とイコールの関係にある。というのは、シリンダー内に吸い込んだ空気量に応じて燃料は供給されるため、多くの空気を取り入れる大排気量エンジンは、そのぶんだけ燃料を消費することになり、大きな出力を得られることと引き替えに、多くの燃料が必要となる。
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一般的に、排気量が大きくなるにしたがって燃費性能が悪くなるのはこのためだが、実際は同一排気量のエンジンであっても、メーカーが異なったり(エンジンが異なったり)、車形が異なったりすると燃費性能に違いが生じてくる。これらは、燃焼効率の違い、エンジンマネージメントの違い、駆動系のギヤリングの違い、車重の違い、走行抵抗の違い、空力性能の違いなどなど、その要因は多岐におよぶが、排気量の違いを逆転するほどの燃費差が生じるケースもある。
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もちろん、市街地走行で通常の内燃機関車(ガソリンエンジン)とモーター動力のアシストが得られるハイブリッド車を比べた場合、相当な開きがあるのは当然だが、同じ内燃機関車同士でもかなりの燃費差が見られることがある。
一例としては、かつて自動車やモーターサイクルのエンジンとして多用された2サイクルエンジンと現在圧倒的多数を占める4サイクルエンジンを比較した場合だ。排出ガスの問題により、現在はほとんど姿を消してしまった2サイクルエンジンだが、レシプロエンジンとして軽量コンパクト、メカニズムがシンプルなため、廉価な小型車や軽量コンパクト性が求められるモーターサイクルで重宝がられた。
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両者の違いは、エンジンが作動するための行程の組み立てにある。同一排気量の単気筒エンジンを例に挙げて考えればわかりやすいだろう。
まず4サイクルの場合、燃焼に関わる一連の行程は、吸気→圧縮→爆発(燃焼)→排気の4行程で組み立てられるが、2サイクルの場合は、ピストン上昇時に圧縮(シリンダー内)と吸気(クランクケース内)→ピストン下降時に爆発と排気(ピストン下降後半期)、混合気の充填が行われ、エンジンの作動は2行程で組み立てられる。
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これをクランクシャフトの回転に置き換えると、4サイクルはクランクシャフト2回転(720度)で1回の爆発(燃焼)であることに対し、2サイクルはクランクシャフト1回転(360度)で1回の爆発と、2サイクルのほうが倍の燃焼回数となる。つまり、4サイクルと2サイクルを同じエンジン回転数で使った場合、2サイクルは4サイクルの倍の燃料を消費する代わりに倍の出力を発生することができる……ということになる。