この記事をまとめると
■かつてタクシー運転士は雇用の調整弁といわれた
■最近では誰でも採用されるわけではなくなってきている
■新人でもアプリを駆使してインバウンドを相手にすることでベテラン並みに稼げる
タクシー運転士の世界に変化が
いままでタクシー運転士は雇用の調整弁といわれた。世の中が不景気となり、さまざまな業種で社員のリストラが進むと、年齢が高くとも比較的スンナリと正社員採用され、健康保険や年金の心配もなく、お父さんがそのまま家族を養うことができたからである。
タクシー会社的には、正社員登用とはいえ給料は圧倒的に歩合部分が多くなるし、自社所有の車両をいわば貸し出して稼いできてもらうというイメージが強かった。ただし、事故や乗客とのクレーム、車両の管理をしっかりするために、運転士を原則正社員採用し、自社所有の車両を使ってもらいタクシー事業者が運行管理をする……というのが日本のタクシーとなっている。
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一方で諸外国、とくに先進国では移民がすぐ就ける仕事として、タクシードライバーに移民が従事していることが多い。やはり敷居がそれほど高くなく、言葉に多少不自由していても腕ひとつで稼げることが大きいようである。
日本のタクシーに話を戻せば、一時期は「3K(危険、キツイ、稼ぎが少ない)仕事」といわれていた。失われた30年などともいわれる長い景気低迷のなか、タクシー需要は減る一方となっていた。そのようななかでも、過去には規制緩和が行われ、新規でタクシー事業に参入する事業者も増え、過当競争が激しくなり運賃値下げ競争も目立った。これにより、単に運転士個々の稼ぎが下がるだけではなく、タクシーの関連する交通事故も激増したことで、3K仕事の代表のような存在となった背景がある。
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そんなこんなでタクシー利用の減少に歯止めがきかないなか、新型コロナウイルス感染拡大となった。外出自粛要請が求められるなか、タクシーの需要はもちろん壊滅的に減り、稼働台数がほんのわずかとなり、高齢運転士の引退や、そのほかの運転士についても離職が目立っていった。
ただし、ここが業界としてある意味転機になったものと考えている。
新型コロナウイルス感染拡大が落ち着くと、インバウンド(訪日外国人観光客)が増え、タクシー需要が戻るなか、深刻な運転士不足による稼働台数不足が発生した。それでもタクシーを利用したいひとは、台数が多いといわれる東京23区内であっても、スマホアプリで配車要請してタクシーに乗るようになり、この流れが一気に定着した。
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スマホアプリ配車はタクシー業界の革命ともいわれ、潜在的なタクシー需要も掘り起こすこととなり、タクシーの稼ぎ方を一変させたともいわれている。いまもって十分な稼働台数が確保されていないなか、東京23区内では年収1000万円台の運転士続出や、東京隣接県でも、ある事業者運転士の平均月収が60万円という話も聞くようになり、いまではタクシーは稼げる仕事となった。3Kのうち、「稼ぎが少ない」はだいぶ変わってきたことになる。
ただし、引き続き「キツイ」、「危険」な仕事には変わらないので、稼げる仕事な一方で、いまもって十分に運転士を確保できていない事業者が大半となっている。