民度が……ではなく文化の違い? 「生ゴミ放置」に「ガムの床への吐き捨て」まで観光バス業界が頭を抱えるインバウンド問題 (2/2ページ)

海外ではさまざまな仕事が分業化されている

 筆者も海外出張で空港から宿泊先、宿泊先から空港といった移動でタクシーを利用する際、重たい旅行用スーツケースなどをタクシーに積み込む際に手伝おうとすると、「俺の仕事だ!」といった感じできっぱり断られることが結構ある。アメリカのようにチップありきの国ならまだしも、それこそチップを必要としない中国などでもその傾向を強く感じることがある。

 つまり、前述した車内でのインバウンドのふるまいも、いたずら半分といった意識で行っているわけではない様子。「きちんと利用料金を払っているし、どうせ帰庫後の車内清掃専従スタッフがいるのだから……」という自分たちの価値観で、なんの悪気もなくふるまっていると考えていいだろう。

 街なかにゴミ箱がないのに街なかにゴミがあまり落ちていないとは、日本を訪れたインバウンドが多く感じることだという。逆に海外の街なかではゴミ箱を多く見かけるのに、街なかには日本では考えられないくらいゴミが溢れている。

 とはいえ、日本に居住しているのならまだしも、短期間遊びに来るだけのインバウンド相手に日本のゴミに関する習慣を周知徹底させるのは難しいし、そこまでやろうとすれば、バス会社へクレームが入るかもしれない。

 中国の新幹線では、通路や足もとにゴミをポンポン捨てられる前にという感じで、頻繁にスタッフがゴミの回収のために巡回していたのを思い出す。

 これぞ異文化遭遇の一例そのものといえよう。すでに事業者やツアー催行業者ではやっているのかもしれないが、エチケット袋のように各座席にゴミ袋を置いて、そこにゴミを入れてもらうぐらいが、協力してもらうというレベルでは精いっぱいかもしれない。ゴミの分別への協力を得るのは難しいだろう。

 アメリカでも家庭ゴミを分別収集しているところを見たことがあるが、日本とは比べものにならないほどアバウトなものであった。聞いてみると、「ゴミ集積場には分別するスタッフがいるからこれでいい」であった。

 筆者も海外に割と長期間出張で滞在し、日本に帰国するといろいろなことが煩わしく感じることがある。ゴミの捨て方とはいえ、「日本では当たり前」という構えでは到底理解を得られることができないし、文化や生活習慣の違うひとたちを迎え入れる準備が、日本ではまだまだできていない一例が、バスの車内におけるゴミ問題なのかもしれない。


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小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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