カタログ数値の「最小回転半径」だけみてクルマを選んじゃダメ! 本当の「小回り性能」とは (2/2ページ)

リアルワールドではボディ最小回転半径が重要

 しかしながら、カタログスペックの最小回転半径だけではリアルワールドにおける小まわり性能を理解することはできない。

 冒頭でも記したように、最小回転半径は外側前輪の軌跡でしかない。ボディサイズに対して極端にホイールベースを短くすればカタログ上の最小回転半径は小さくできるが、リアルワールドではボディのオーバーハング(前後に飛び出ている部分)と障害物との干渉も考慮しなくてはいけないからだ。

 タイヤの軌跡としては曲がれても、実際にはオーバーハングの部分が建物などに当たってしまうため曲がれない……といったケースも珍しくない。実際の小まわり性能においては、そうしたボディ形状についても考慮する必要がある。

 そこで注目したいのが「ボディ最小回転半径」という考え方だ。これはタイヤの軌跡ではなく、バンパー先端での最小回転半径を示すもの。当然ながら、カタログスペックの「最小回転半径」よりは大きくなる。

 たとえば、トヨタが公表しているRAV4の数値でいえば、届出値の最小回転半径が5.5mとなっているのに対して、参考測定値のボディ最小回転半径は5.9mとなっている。

 できれば、国産全メーカーが参考スペックとしてボディ最小回転半径を記載してくれると、小まわり性能を重視したクルマ選びにおいて役に立つことだろう。わかりやすい指標として、広まることを期待したい。

 なお、リアルワールドでの小まわり性能に影響するファクターとして、重視したいのは車両感覚の掴みやすさ(前後端の位置の把握しやすさ)だろう。ただし、車両感覚の掴みやすさについては個人差も大きい部分であり、ボディサイズのようなスペックだけでは判断しづらい。

 クルマによってはボンネットのキャラクターラインによってノーズ位置を把握しやすいようなデザインを与えられていることもある。そうしたカタログや試乗記に書かれることの少ない部分については、購入前に運転席に座るなどして確認するといいだろう。


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山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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