世界各地の販売実績を見ると「マイナス」ばかりではない! それでも日産が危機に陥っているのはなぜ?

この記事をまとめると

■2024年度に6708億円の赤字を計上し国内外で工場閉鎖を進める日産

■日本・中国市場で販売減、北米は増加も収益性に課題あり

■日本の消費者からは依然として応援の声があり、再生に期待がかかる

日本人の多くが気にする日産の行く末

 自動車メディアの末席にいる筆者だが、同業者同士ではなく一般のひと(クルマ好き)と話をしていて最近必ず聞かれるのが、「日産どうなの?」ということだ。

 経済アナリストでもない筆者が軽々に語れるほど状況はシンプルではないものの、深刻な状況になっているのは伝わってきているが、世のなかでも多くのひとが気になるトピックとなっているようだ。

 2024年度の決算では6708億円の巨額赤字となり、世界規模で7カ所の工場を閉鎖し、2万人の人員削減を行うことを発表している日産。そしてついこの間、神奈川県・横須賀市にある追浜工場と、神奈川県・平塚市にある日産車体の湘南工場の閉鎖が検討されているという報道が駆け巡った。

 日産の2024事業年度締め(2024年4月〜2025年3月)での年間販売実績をみると、日本国内ではいずれも前年同期比で登録車がマイナス5%、軽自動車がマイナス4.5%となった。ちなみにトヨタは、ほぼ前年同期比レベルを維持している。

 2024年秋ごろには日産について「2024年4~9月期連結業績における営業利益が前年同期比90%減」というショッキングなニュースがすでに報じられており、2024年4月以降はしばらく前年同期比をほぼトレースするような販売実績となっていたのだが、2024年末からは前年同期比でマイナス幅が目立ってきている。

 海外の販売実績をみると、北米(アメリカ、カナダ、メキシコ)はプラス3.3%となったものの、中国マイナス18.6%、欧州マイナス2.9%となり、グローバル販売ではマイナス4.3%となった。日本メーカーが強みを見せる東南アジア市場でも、日本メーカーのなかでは「ひとり負け」といっていい状況となっている。

 自国メーカーによるガラパゴス化が進む中国市場は、日系ブランドだけではなくその他の外資ブランドも苦戦しているのだが、トヨタが前年同期比94.1%というのを見ると、マイナス18.6%という落ち込みは相当なものだ。

 アメリカだけを見ると前年同期比プラス2.5%となっているが、レンタカーへのフリート販売や割引による乱売傾向が目立っていることもあり、収益面ではかなり厳しいのではないかと筆者は考えている。

 また、日産ではアメリカ市場向けにも早くからCVTを採用していたのだが、話を聞く限りでは導入初期には不具合が多発したこともあり(ユーザー側の使いかたもあるのだろうが)、日産車の品質に疑問をもつひとも少なくない。販売台数自体はフリート販売などで調整できるものの、エンドユーザーレベルではなかなか優良顧客を捉えきれていない部分もあるようで、その点でも苦戦傾向が目立つという話もある。

 日本で販売台数が期待できるのは、ノート、セレナ、そして軽自動車ぐらいとされており、エクストレイルなどもクルマ自体を評価する声はあるが、車両価格が高すぎるのがネックとなっている。次期型エルグランドが近々登場するとの報道もあるが、やはり「売れる」高収益車種というものがほしいところである。

 日産の現状は、なにか大きな原因が招いたというわけではない。さまざまなことが複合した結果であるだけに、それを紐解くのはまさに至難の業だろう。「ゼロからの再出発」とはならず、マイナスからの……となる厳しい状況だが、幸い日本国内の消費者については、現状の日産に対して応援する気もちのほうが目立っているので、とにかく再生へ向け突き進んでほしいところである。


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小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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2019年式トヨタ・カローラ セダン S
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渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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