中古車屋になるための審査は厳しい
<自動車という特殊な商品の管理>
中古車を扱う古物商許可において、警察はほかの品目よりも厳格な審査を行う傾向がある。これは自動車という商品の特殊性に起因している。まず、自動車は「古物」に指定された品目のなかでもとくに高額な商品であり、盗難車が市場に流通した場合の経済的損失は甚大だ。さらに、自動車には車体番号という固有の識別番号があり、これは盗難車の発見や追跡において重要な手がかりとなる。
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また、古物商許可申請において、自動車を扱う場合、ほかの品目では求められない追加の確認がある。たとえば、車両の保管場所に関する資料の提出や、盗難車を見極める知識があるかどうかの質問などである。申請者が中古自動車業界での勤務経験を有しているか、最低限の知識として車体番号の確認方法を知っているかなど、実務的な能力についても確認される。これは単なる事業許可ではなく、盗品流通を防止する重要な役割を担う存在としての適格性を確認するためである。
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自動車の盗難は組織的犯罪の色彩が強く、盗難車の転売ルートを断つことは治安維持の観点から極めて重要だ。中古車販売業者は、意図せずとも盗難車を扱ってしまう可能性があり、その際に適切な対応ができるかどうかが社会全体の安全に直結する。警察が古物商許可を管轄し、とくに自動車を扱う業者について厳格な審査を行うのは、こうした社会的責任を担うことが期待されている。
<現代における管轄の合理性>
他方、国土交通省は自動車の安全性や環境性能、交通インフラの整備などを主管しており、その業務は古物営業法がめざす犯罪防止とは性質が異なる。運輸支局で行われる自動車登録は、車両の所有関係を明確にし、税金の徴収や交通政策の基礎データを得ることが主目的である。
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現在でも古物営業法は警察庁生活安全局生活安全企画課が所管しており、全国の警察署が窓口となって許可業務を行っている。申請者は主たる営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課防犯係に申請書を提出し、通常は30〜40日程度の審査を経て許可証が交付される。この期間中に、申請者の過去の犯歴や事業計画の妥当性、管理体制の適切性などが詳細に調査される。
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また、古物商には許可取得後も継続的な義務が課せられている。営業内容の変更や営業所の移転などがあれば速やかに届け出なければならず、法令違反があれば営業停止や許可取消などの行政処分を受ける可能性もある。これらの監督業務も警察が担当しており、犯罪防止という観点から一貫した管理体制が構築されている。
中古車販売業における古物商許可が警察管轄である理由は、単なる歴史的経緯ではなく、現代においても十分な合理性を持った制度設計なのである。