この記事をまとめると
■ロータリーエンジンの排気量はレシプロエンジンと比較する際には係数をかけて換算される
■ロータリーエンジンはローターが1回転すれば3回の燃焼を行うことができる
■モータースポーツではレースをおもしろくするためにロータリー係数が調整されてきた
レシプロとそのまま比較できないロータリーエンジン
ロータリー係数とは、レシプロの4ストロークエンジンと性能を比較するうえで用いられる排気量換算を指す。たとえば、自動車税においては、実際の排気量✕1.5倍と定められている。
ロータリーエンジンの燃焼イメージ画像はこちら
理由は、ロータリーエンジンとレシプロエンジンの機構が違うためだ。まず、レシプロエンジンの排気量を振り返ってみる。シリンダーの内側をピストンが上下に動き、ピストンが一番下から一番上まで移動する間の、シリンダー内の空間容積を排気量とする。
では、ロータリーエンジンはどうか?
ロータリーエンジンの機構と作動を振り返る。繭型をしたハウジングの内側を、三角形のおむすび型をしたローターが偏心しながら回転する。ハウジングの内側をまわるローターが、ハウジングと接する左右の点と点の間の空間が排気量になる。その空間は、ローターが回転するにしたがって、繭型をしたハウジング形状により、吸気を取り入れる過程で容積は最大になり、点火プラグで着火するところで小さくなる。その容積変化が排気量になる。
ロータリーエンジンの内部構造画像はこちら
ところで、三角形をしたひとつのローターは、各辺にハウジングとの空間ができ、ローターが1回転すれば3回の燃焼を行うことができる。ただし、ローターの動きを出力として取り出すエキセントリックシャフト(レシプロエンジンでいえばクランクシャフト)は、ローター各辺の1回の燃焼ごとに1回転しているので、レシプロエンジンでいえば、クランクシャフトが1回転するごとに毎回燃焼する2ストロークエンジンのような作動といえる。
一方、4ストロークエンジンは、クランクシャフト2回転で1回の燃焼しかできないため、ロータリーエンジンのほうが2倍の燃焼機会があることになる。そこを調整するため、ロータリー係数が使われる。
レシプロエンジンの仕組み画像はこちら
ところが、ロータリーエンジンの排気量を2倍に換算したとしても、レシプロの4ストロークエンジンと同等の馬力を得られるかというと、そこまで至らないのが現実だ。そこで、ロータリー係数を2ではなく、1.5としたのが、税制の考え方になる。
次に、レースやラリーなど競技(モータースポーツ)の場ではどうか。
エンジン性能や車両重量など、いわゆるパワー・ウエイト・レシオの観点から、ロータリーエンジンの排気量をどう判定するかが都度検討される。競技の種類によって、あるいは開催年度によって、調整されてきた歴史がある。
マツダ787Bの走行シーン画像はこちら
そこは、勝負を面白く演出しようとする競技主催者団体などの思惑があり、参加者からすれば、いかに自分たちに有利に事を運べるか、いわば政治的な事前の駆け引きも関わる。
そうしたなか、1991年のル・マン24時間レースでマツダが優勝したことは、ロータリーエンジン史における快挙のひとつといえる。マツダが優勝するまで、日本の自動車メーカーはル・マンで勝てずにいたからだ。