偶然が生み出した軽自動車も
それはさておき、商品企画の最初から軽自動車として作っていなかったのに、結果として軽自動車として販売することができた輸入車も存在している。
まず紹介したいのは、ダイムラー(現・メルセデス・ベンツ)が正規輸入した「スマートK」だ。もともと腕時計ブランド「スウォッチ」とコラボレーションしたシティコミューターとして誕生した初代スマート・フォーツーは、名前の通り2名乗車のコンパクトカー。総排気量600cc未満の3気筒ターボをリヤに積み、後輪を駆動するというメカニズムだった。
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そして、初代スマートが誕生したのと時を同じくして日本の軽自動車規格が、現在のそれに改正された。全長3.4m・全幅1.48m・全高2.0mまでボディサイズが拡大されたのだ。
初代スマートは2人乗りゆえ、全長2.5mとコンパクト。全幅が1.51mとなっている以外は軽自動車規格に収まるボディサイズだった。そうした追い風を受けて、日本向けにリヤフェンダーをナロータイプとして、軽自動車規格に収めたのが「スマートK」だ。もともとの商品企画としては欧州向けシティコミューターだったが、わずかな手直しで軽自動車規格に合致するという偶然が生み出した輸入・軽自動車といえる。
似たような経緯で、軽自動車として販売されたのが「フィアット126」だ。
1972年に生まれたフィアット126のボディサイズは全長が3mちょっと、全幅が1.4m弱といったもので、エンジン排気量は594cc、652ccとなっていた。
しかし1970年代、日本の軽自動車規格は全長3m・全幅1.3m・全高2.0m以下で、エンジン排気量は360cc以下となっていた。当然ながら誕生した当時のフィアット126は軽自動車規格をわずかに上まわっていたのだった。
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ただし、軽自動車規格が改正されていくと状況は変わる。1990年には全長が3.3mまで拡大され、エンジン排気量も660cc以下となった。つまり、フィアット126は軽自動車枠に収まるモデルとなったのだ。
ただし、原則として生産時の軽自動車規格に収まっていなければ、日本で軽自動車として黄色いナンバーをつけることはできない。1970年代に生産されたフィアット126を日本にもち込んだところで、軽自動車としては認められないのだ。
つまり輸入車の場合、軽自動車として認められるかどうかは製造年と、その年代の規格が合致している必要がある。
しかしながら、イタリア本国での生産はとうに終わっていたフィアット126は、ポーランドでは2000年まで生産されていた。つまり、1990年以降に生産されたフィアット126については、日本で軽自動車として販売することができた。実際、少量ながら“軽自動車のフィアット126”として輸入された個体があったのだ。
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冒頭で触れたBYDの軽EVはガチで日本市場をターゲットにして開発されているものと予想されるが、そうではない『偶然の産物』としての輸入軽自動車は生まれることはあるのだろうか? シティコミューター的EVへのニーズが世界中で高まっていることを思えば、軽自動車でもさまざまな輸入車を選べる時代が来るかもしれない。