この記事をまとめると
■アメリカ国内の産業の活性化を図ることを目的に関税政策をとるトランプ政権
■トランプ関税はアメリカのメーカーにも多大なる影響を与えている
■トランプ政権はどのようにして自動車に係る関税の落としどころを見出すかに注目だ
アメリカ国内外の多くの企業を巻き込むトランプ関税
トランプ関税が、日本メーカーに大きな影響を与えている。新車、自動車部品、そして原材料など、自動車の製造にかかわるほとんどに対して税率を上げた。こうした措置の見直しについて、日米の政府間交渉が続いているところだ。
トランプ政権の基本姿勢は、アメリカへの輸入を抑制することで、アメリカ国内の自動車関連産業を活性化させる、Made in USAの徹底にある。
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こうした強引とも取れる政策に対して、日系メーカーにとっての対応策の選択肢は多くない。日本からアメリカ、または隣国のカナダとメキシコからアメリカへの完成車輸出量を抑制し、そのぶんをアメリカ国内生産に切り替えること。また、アメリカ国内での部品調達率をさらにあげることなどの正攻法を取るしかないだろう。
一方で、アメリカ自動車メーカーにとっても、トランプ関税に対して両手を上げて歓迎しているとはいい難い。
1994年に発効したNAFTA(ナフタ:北米自由貿易協定)は、北米に位置するカナダ、アメリカ、カナダが貿易上ではひとつの国のような関係性をもつことで、互いの経済活動を活発にしようという施策だった。2018年にはNAFTAからUSMCA(アメリカ・メキシコ・カナダ)協定へと置き換わっているが、北米内での貿易のハードルを下げるという面ではNAFTAを継承しているといえる。
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たとえば、GM(ゼネラルモーターズ)の場合、メキシコへの依存度が高い。メキシコからの完成車だけではく、主要な部品をメキシコからアメリカに輸出している。
ひとつの事例が、メキシコ国境と隣接する米テキサス州にあるアーリントン工場だ。大都市のダラスにほど近い立地で、周辺は新興住宅地が広がるエリアに位置する。もともと、アーリントン工場では、いまはなきブランドであるポンティアックやオールズモービルなどを生産していた。それが1990年代以降、GM「タホ」「シルバラード」、GMC「ユーコン」、そしてキャデラック「エスカレード」などのフルサイズSUVの主力工場に転じた。収益性が高いこうしたモデルは、GMにとっての稼ぎ頭である。
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筆者はこれまで何度も、アーリントン工場を視察し、GM関係者と意見交換してきたが、同工場の特徴はメキシコからラダーフレームを鉄道で輸送していることだ。工場に沿って軌道があり、貨車毎にラダーフレームが積み上げられている。
これらをメキシコから引っ張ってくるのだ。しかも、軌道は工場内部に直結しており、貨物から降ろされたラダーフレームがそのままメインの製造ラインを流れる仕組みだ。
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こうしたGMの生産プロセスにおいて、トランプ関税の影響は大きい。
今後、トランプ政権はどのようにして、自動車にかかわる関税の落としどころを見出すのか。日本メーカーなど海外メーカーのみならず、地元アメリカメーカーもことの成り行きを慎重に見ている。