足まわりはもう少し引き締めたほうがいい
そんなeビターラのFF・2WDモデルにまずは乗ってみる。リン酸鉄リチウムイオンバッテリーの容量は49kWhか61kWhを選択することが可能だが、今回は61kWhのみの試乗だ。乗り込んでみるとブラック基調にブラウンが随所にあしらわれたインテリアがなかなか上質な感覚だ。さらにインテリジェントディスプレイやフローティングセンターコンソール、そしてアンビエントライトがドアに入れられるなど、かなり頑張っている様子が伺える。

bZ4Xでもお馴染みだったATセレクターを弾きコースインしてみると、静粛性豊かに加速してみせる。EVだからと極端なトルクを出すことなく、あくまでもリニアに自然に速度を重ねるマナーのよさは好感触だ。0-100km/h加速は8.7秒とそれほど速くはないという印象だが、この手のクルマとしては必要十分な部類だろう。ちなみに最高出力は128kW、最大トルクは193Nm。車重は1790kg。一充電走行距離は500km以上を予定しているらしい。

フットワークはしなやかだ。タウンスピードではマイルドな乗り味を展開できそうだ。試乗場所がサーキットということもあり、上限120km/h辺りまで試してみたが、うねるような路面に行くと動きが収束しないようなシーンも見られる。ワインディング区間ではやや頼りなさも感じられ、悪路重視なセッティングなのか、はたまた抑えが足りていないのかが理解しにくい。

スラローム区間ではコラムアシストの電動パワーステアリングにアシストの遅れや足しすぎが見られ、左右に切り返すシーンではリニアな感覚が希薄だった。こうしたシャシーの傾向は100kg重い4WDモデルになるとより感じられ、緊急回避的に動かすとリヤがスタビリティコントロールが働く前に発散するシーンもみられた。0-100km/h加速は7.4秒とさらに速く、合計最大トルクは307Nmにもなるのだから、もう少し引き締めても良かったように感じる。

また、細かなところではあるがアクセルオフ時の回生量の3段階調整が、停車時にしか画面上の深い階層のところでしか選択できなかったり、エアコンのオンオフも画面上でしかできないことが気になった。

いずれにしてもまだプロトタイプなので、これからの仕上げに期待したいところ。あとはどの程度の価格で登場するのかもこのクルマの印象が異なってくるだろう。いずれにしても走りにも価格にもこだわるスズキなら、きっと期待を裏切るようなことはないだろう。
