この記事をまとめると
■シトロエンは電動化の波に負けず独自路線を貫いている
■コンセプトモデルもらしさ全開で非常にユニークだ
■同社のフラッグシップとなるC5エアクロスもまたシトロエンテイスト満載だった
フランスの地でシトロエンに染まる
近頃はハイブリッドやエンジン回帰の兆しも多少アリとはいえ、CO2排出を下げないと罰金ペナルティが課されて売上や利益が食われてしまう域内ルールがある以上、欧州車メーカーにとって電動化は喫緊の課題。電動化=制約の多いクルマづくりのようだが、じつは開き直って楽しんでいないか!? とツッコみたくなるのはシトロエンだ。
「デザイン上の制約はむしろ(BEVでは)減りましたからね。リサイクル面や軽量化だけじゃなく、発色の点でも樹脂やポリウレタン、アルミは有利ですから」と、パリ近郊のステランティス・デザインセンターで語るのは、シトロエンのアドバンストデザインのチーフデザイナーを務めるピエール・サバス氏。じつは移籍してくる以前には、ルノーで2代目キャプチャーや5代目ルーテシアのエクステリアを手がけた張本人でもある。
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今回は2022年に発表されたプロトタイプで、今後のシトロエンのデザイン要素が詰まっているという「oli(オールイー)」を間近で観察。観音開きのドアを開けて驚くのは、鮮やかなオレンジ内装。近頃は射出モールドや3Dプリンタといった成型技術もますます向上しているので、樹脂やポリウレタンを大胆に用い、パーツ点数をがっつり減らしているという。たとえばフロントシートの構成パーツは、パイプフレームと背もたれとベースクッションの、わずか3点のみ。クッション性のあるフロアはスニーカーのソールと同じ素材だとか。
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そもそもこのオールイー、市販車と同じSTLAスマートプラットフォームに基づくBEVで、はた目にそうは見えないが、乗員5名で荷台も備わるので車型としてはダブルキャブのピックアップトラックだったりする。
黒い樹脂パーツは、ハニカム補強の段ボールを薄いプラスチックで包んだもので、ボンネットとルーフは人が乗っても平気なほど丈夫で、テラスにもなる。もともとのコンセプトは「イマドキの必要十分を実現する」で、生産するにもリサイクルするにも環境負荷が大きく、車重2.5トン前後が当たり前な現状のBEVへのアンチテーゼだが、結果として遊びゴコロのほうが勝った1台なのだ。
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そして、遊びゴコロといえば、この夏から欧州では「アミバギー」なるドアはパイプだけのキャンバストップモデルが登場したシトロエン・アミ。通常モデルはライト位置を少し上にズラすフェイスリフトを受けた。バルーン気味のマッドテレインタイヤ以外は、ほぼ市販バギー版と同じという「アミバギー・コンセプト」を、ちょい乗りながら走らせてみた。
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プラスチック成型パーツを積極的にとり入れた内装は、より現実的だがオールイーに通じるところがある。ステアリングもプラスチック樹脂だが、操舵すると意外なほどキチンとした手応えを返してくる。見た目はおもちゃっぽく見え、「免許なしグルマ」とカテゴライズされるが、中身や走りはちゃんとしたクルマで唸らされる……などといいたいところだが、左右も上も開けっぴろげな開放感と、低速でも強烈な疾走感に、つい口もとが緩んでしまった。
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実質的な原付4輪免許は要るものの、フランスでは14歳から乗れるので、あちらのヤングが羨ましい限りだ。ちなみに市販版のアミバギーの600台限定「パルメイラ」パッケージは、フランスで夏前に速攻売り切れ。相当数の大人も買っていると思われる。