ボロッボロのプジョーでフランスから東京まで自走だと!? プジョー104で東京タワーにやってきた男を直撃取材した!! (2/2ページ)

約50年も年式差のある最新プジョーとの邂逅

 すると、小川ディレクターが乗ってきた新型のプジョー3008にルナンさんが興味を示しはじめた。3気筒ターボで1.2リッターの小排気量のわりに出力は136馬力と、相対的には高出力なユニットで、しかも48VのMHEVが組み合わされている。ルナンさんの104 LSは1124cc、57馬力仕様なので、約50年の差があるもののほぼ同等の排気量だ。

「まずエアコンが利いていることが……夢のようだね。東京はタクラマカン砂漠より暑いというか熱がこもって、104で走っているとキツいんだ」

 東京タワーのまわりを走らせながら、操作から視界まで最新のi-Cocpitの近未来的な感覚、新しい3008がルナンさんにもたらすフィールは、まさしく隔世の感のようだ。

「同じフランスから来たもの同士とは思えない(苦笑)。自動車の進歩ってすごいものがあるね。あ、でもロゴは少し変わったけど同じプジョーか」と、笑う。

 ラグビーのワールドカップを観戦するとか、欧州で周年記念イベントに参加したいからといった、なにかしら目的があってユーラシア横断旅行をクルマでした人の話はこれまで聞いたことはあるが、ルナンさんの旅は、104で移動することそのものが目的であるかのよう。東京タワーの麓に戻って、あらためてなぜパリ~東京を、まるで思いついたようにクルマで走破する気になったのか、尋ねてみた。

「そうだね、大がかりな準備と予算による冒険旅行じゃなくて、10年前に1000ユーロで買った中古車でもなんとかなることを証明したかったのかも。時間はかかったけどね(苦笑)」

 ルナンさんのユーチューブ動画は、1エピソードあたり40数分から50分前後と、けっこう長い。だが、近頃流行りの面白おかしいとか絶景が切り取られただけの短いシークエンスではなく、訪れた地の様子や当夜のホストファミリーの生活を長まわしで見せているからこそ、見飽きないリアリティが込められている。

 彼は「たまたま偶然」と述べるが、道中寄ってきた街や場所は、大きな戦争から細かな紛争まで、過去に戦場となった地も少なからずで、そうした地のいまの雰囲気をリアルに伝えるルポという意味でも、貴重といえる。

 ルナンさんはあと1カ月ほど日本に滞在するそうで、夏休みは都内も他県ナンバーが多く走っている季節でもある。でも、フランスのナンバーを付けたプジョー104は間違いなく彼しかいないので、SNSや動画の視聴はもちろん、リアルに見かけたら声をかけてみてほしい。


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南陽一浩 NANYO KAZUHIRO

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