この記事をまとめると
■40年ほど前の新車販売の現場では夏ごろに新入社員が販売研修で現場に来ていた
■ノルマをこなすとその後の配属が有利になるともいわれていた
■最近は仮配属程度で販売員体験レベルが主流となっている
昭和のころは新人でも研修でクルマを売らされていた
かつて(はるか昔の40年ぐらい前)某メーカー系ディーラーでは、8月と9月に扱う車両のメーカーに、その年の4月に入社した新入社員が販売研修として数名やってきていたとのこと。
入社したあとに居住地近郊の系列ディーラーで販売現場についての研修を行っていたようなのだが、いまどきはほとんどのメーカーではこのような研修は行っていないとも聞く。しかし、当時はディーラーにきて見学するのではなく、実際にセールスマンとして新車を販売していたとのこと。
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「当時はまだまだ飛び込み営業が盛んに行われていましたから、暑いなか1日中飛び込み営業をやっていたと聞いています(事情通)」。ただ売るだけではなく、目標販売台数までも設定されていたようだ。
目安として、8月と9月の2カ月で合計9台販売すると、メーカーへ戻ったときに希望部署への配属が叶いやすいと、受け入れ先ディーラーは聞いていたそうだ。2カ月で9台というのが、販売員の目線で見るとなかなか考え抜かれた台数だったとのこと。
「8月は夏休みで、ディーラーはお盆時期に長期休業します。そのため、いまも昔も4月などと並び、新車の売れない月となっています。9月は事業年度締め上半期末なので、逆に新車がよく売れます。したがって、うまく合算すれば9台受注をとるのも不可能ではないです。ただ、親族や友人、知人に買ってもらったとしても、現実は9台を達成するのはなかなか厳しいのが実情です。つまり、飛び込み営業などで新規顧客開拓を行い、一般的なセールスマンのような販売促進活動を行わないと、実現は難しいでしょう(事情通)」。
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8月、そしてまだまだ残暑の厳しい9月にひたすら訪問販売活動を行ったので、研修が終わるころは真っ黒に日焼けしてメーカーへ戻っていったとのことであった。
またこの期間は、単なるメーカーの新人研修で終わらなかったという話も聞いている。
当時の新車ディーラーのセールスマンは、四年制大学を卒業して新入社員としてディーラーに入社するということはほとんどなかった。まさに腕一本で、新車販売の世界に異業種から飛び込んで新車を売りまくって給料を上げ(歩合給が高かった)、そして出世していった。
そのようなセールスマンたちに会社が「有名4年制大学を卒業し、大手企業に入社してすぐに9台売ってメーカーに戻っていったぞ、君たちも見習ってしっかり売りなさい」と、会社にお尻を叩かれていたそうである。
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もちろんディーラー研修だけではなく、生産現場などでも研修して、最終的には本社の管理部門に配属されるのだろうが、何ごとも身をもって体験することがよかれとされていたころの話であり、いまの令和の世の中で復活させろというつもりは毛頭ない。
いまはディーラー社内で、学卒で春に一括採用したセールスマンを、正式配属前にインターンみたいな感じで、短期間だけ仮配属を繰り返すディーラーもあると聞いている。
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採用人数はバブルのころに比べれば減っているなか、本部の管理部門で働く幹部社員候補も必要なので、とにかく会社の隅々をできるだけ見てもらおうとの配慮のようだ。
いまはDX(デジタルトランスフォーメーション)も進んでいるので、体験しなくてもさまざまなことを把握できるのかもしれない。ただ、実際に体験したことの重みは、いまも昔も変わらないのではないかと筆者は考えている。