EV時代にはフレーム的な設計思想が再び脚光を浴びる
また、フレーム構造にはタフネスという特徴がある。トラックなどは何十万kmも走行することが前提であり、クロスカントリー4WD車でもボディが捻じれるような悪路を走破できることがターゲットとなっている。そうした高いレベルの耐久性において、フレーム構造には一日どころか千日の長がある。
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反対に、フレーム構造には「重い」というデメリットがあり、ボディを載せるという構造からドライバーがリニア感を感じづらいというウィークポイントがある。重くなってしまうことは、燃費などの経済性においては不利であり、リニア感に欠ける特性はハンドリングなどの運動性能評価においてネガティブな要素だ。
乗り心地については、フレームからボディ(キャビン)を浮かせることでモノコック構造では不可能なレベルに高めることもできるが、それは大型トラックに限ったメカニズムであり、小さなフレーム構造のクルマにおいては快適性についてもモノコックボディには及ばない。
ひと言でまとめると「フレーム構造のクルマは快適性・運動性・経済性に不利」といえる。バリエーション展開のしやすさが重要な場合と、タフネスが最優先されるケースを除けばモノコックボディが優勢であり、フレーム構造のクルマが少数派になってきた、というのは自動車テクノロジーの進化の流れとしては自然だ。
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はたして、フレーム構造のクルマはどんどん過去に追いやれてしまうのだろうか。否、電動化が新時代のフレーム構造を生み出す気配もある。
最新のEV(電気自動車)においては、モーターを搭載する前後セクションを大きな鋳造パーツで一体成型するギガキャストやメガキャストと呼ばれる技術が広がりつつある。ギガキャストに駆動モーターやインバーター、サスペンションにバイワイヤ仕様のステアリング系を組み込み、バッテリーを詰め込んだフロア下の構造物で前後をつなげば、それ単体で走行可能な状態になる。これはボディなしで走行可能なラダーフレームの特徴とよく似ている。
実際、トヨタの次世代工場ではバッテリーやモーターを搭載したフロア部分だけで自走できるというコンベアレスの自走式ラインが想定されている。
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つまり、EVにおいてはフロア部分だけで走行性能を完成させることが可能といえる。次世代EVプラットフォームにおいては、ボディは載っているだけとなる可能性もある。そうなれば、現在のフレーム構造のクルマがもっているような高い汎用性も実現できる。同じEVプラットフォームを量産、そこに注文に応じたボディを載せていくという設計になれば、コストダウンと多彩なバリエーションという相反する要素を両立することができる。
EVの場合はラダー形状とはならないだろうが、フレーム的な設計思想が再び脚光を浴びる未来は着々と近づいているのかもしれない。