痛快のライトウエイトスポーツだった
ソネットII(1966)/ソネットII V4(1967)
1960年代を迎えると、北米のサーブディーラーからの熱望で、本社はスポーツカーの開発に本腰を入れました。MGやトライアンフがアメリカで爆売れしていたので、スウェーデンの人々も乗り遅れたくなかったのでしょう。
デザインコンペまで催す熱の入れようで、ボディは再びGFRPが選ばれ、ボックスフレームのシャシーを新設計するなど、サーブとしては全力投球だったかと。ところが、お得意の2ストロークエンジンを搭載したまではよかったのですが、これがアメリカの排ガス規制に合致しなくなることが判明。1966年中に230台、その後わずかに作られたものの2ストロークのソネットIIはあえなく生産中止となってしまいます。
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せっかくコンペまで行ったソネットIIですから、サーブはフォードからV4エンジンを購入して延命措置を図りました。タウナス用の1.5リッターエンジンですが、これを搭載するにはフロントフードの改修が必要で、なんだか勇ましいパワーバルジが加わることに。
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これがソネットII V4と呼ばれるモデルなんですが、最高出力65馬力を得たものの、重量増しから0-100 km/h加速12.5秒と2ストロークと変わらないパフォーマンス。もっとも、最高速は160km/hまで向上しています。
1969年までに1600台あまりが生産され、すべて左ハンドル(北米仕様)ながら日本へも並行輸入されたことがあるようです。
ソネットIII(1970)
最後のソネットとなったIIIのトピックスは、やはりイタリア人デザイナー、セルジオ・コッジォーラによるスタイリング。ですが、彼の提案どおりのデザインでは製造ラインの大幅な変更が求められたため、社内スタイリストのグンナー・A・シェーグレンがかなりの手直しを加えたとのこと。
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そもそも、ⅡやV4のスタイリングについてはさほど好評でもなく、またサーブは「このほうが早い」と考えていたコラムシフトも、MGやスピットファイヤといったライバルのフロアシフトに比べれば「時代遅れ」とさえ受け止められていたのです。
そうした要素をIIIではアップデートし、流行りのリトラクタブルライトやフロアシフト、ガラスハッチバックなどを採用したのですが、マニアにいわせると「マイルバンパー」がすべてを台無しにしている、と(笑)。
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とはいえ、V4エンジンは規制への対策として1.7リッターへスープアップされ、それまでの65馬力を維持したほか、重量が増加(880kg)しても0-100km/h加速13秒と、それなりのパフォーマンスを発揮しています。また、サーブの面目を保ったのは空力抵抗Cd値0.31という優れた数値から、最高速165km/hが実測できたことでしょう。
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結局、1974年までに8368台(1万台を超えるとする説もあります)ものソネットIIIが生産され、サーブとしてはいくらか溜飲を下げたのだと思われます。なにしろ、初代ソネットからV4あわせて2000台そこそこでしたから、最大のヒットといってもおかしくはないのです。
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その後、コッジォーラの提案でソネットの後継モデルが模索されたこともありましたが、当時のサーブはターボエンジンの開発にリソースを傾けていたことから実現ならず。ソネット・ターボを夢見ていたファンにとっては、じつに悔しい限りでしょう。