ドアを開けるとシワッシワ! 布製ボディってどういうこっちゃ? 奇才クリス・バングルが作ったBMW「ジーナ」が謎すぎるコンセプトカーだった (2/2ページ)

素材だけでなくギミックにもこだわった

 細目に見えるヘッドライトも点灯時にはスリットが引き開かれ、パッチリとしたライトが現れるほか、リヤスポイラーも「成長」させるギミックが盛り込まれているとか。これらは、アルミワイヤーフレームによって構成され、柔軟性が必要な場所(ダクト、ドア開口部、スポイラー)では、より柔軟なカーボン素材が用いられているとのこと。

 なお、開発に長期間をかけただけあって、素材となった半透明の人工布スキン(ポリウレタンコーティングされたスパンデックス)は伸縮性、耐水性、弾力性に富んでいるほか、高温や低温に強く、動きがたるんだり傷んだりもしづらいとされています。

 さて、変形・成長する布製ボディに加え、ジーナには当時としては革新的なアイディアがもうひとつ盛り込まれていました。それは、停止・駐車されている際、ステアリングホイールとインパネはセンターコンソールの「アイドル」位置に収納され、乗員の乗降スペースを確保してくれるギミック。

 往年のメルセデス・ベンツ300SLがステアリングシャフトを折ることでスペースを確保していたことはありますが、インパネまで畳み込むのは新しい試み。そして、ドライバーがスタートボタンを押すとステアリングホイールと計器が正しい位置に移動、次いでヘッドレストがシートからせり上がることでスタート準備が整うといった次第。

 クリス・バングルはジーナの開発に当たって「ルーフというものは本当にピラーの上に取り付けられ、その境界がウインドウと接していなければいけないのか?」「必要とされていないときでも、あらゆる機能が常に乗る人の目に見えていなければいけないのか?」といった従来の常識に対する問いかけを絶えずしていたとのこと。一般人からしたら「当たり前じゃね」と一笑に付すところに、クリスは抗ったのでしょう。

 その結果として生まれたジーナは、やはりオモシロコンセプトカーとしては珠玉の出来栄えといえるのではないでしょうか。


この記事の画像ギャラリー

石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

文筆業

愛車
三菱パジェロミニ/ビューエルXB12R/KTM 690SMC
趣味
DJ(DJ Bassy名義で活動中)/バイク(コースデビューしてコケまくり)
好きな有名人
マルチェロ・マストロヤンニ/ジャコ・パストリアス/岩城滉一

新着情報