駐車場の形式は一緒なのになんで国によって駐車の向きが違う? 「前向き」「後ろ向き」が決まる要因とは (1/2ページ)

この記事をまとめると

■駐車方法には「前向き駐車」と「バック駐車」がある

■日本ではバック駐車が多い一方で欧米では前向き駐車が主流だ

■日本がバック主流となった背景には道路環境や車両設計や安全意識などが絡んでいる

日本で前から駐車をあまり見かけない理由

 日本の駐車場を眺めてみると、ほぼすべてのクルマが後ろ向きで駐車している。しかし、海外では状況が大きく異なる。アメリカやヨーロッパの多くの地域では「前向き駐車」が主流であり、日本の「バック駐車」は世界的に見ると特殊な習慣だといえるだろう。

 なぜ日本ではバック駐車が圧倒的に多いのだろうか。その背景には、狭い国土という日本特有の事情や安全への配慮など、さまざまな要因が絡み合っている。

 アメリカの大型スーパーマーケットの駐車場では、ほぼ100%が前向き駐車だ。これには合理的な理由がある。アメリカなどでは一度の買い物で大量の商品を購入する傾向があるため、トランクへの荷物の積み込みやすさを重視する。前向き駐車であれば、カートから直接トランクに荷物を入れることができ、隣接するクルマの間を通り抜ける必要もない。

 ただし、ヨーロッパでは事情が異なる。ドイツ、フランス、イギリスなどの都市部では駐車場が狭いため、バック駐車が多く見られる。また、路上駐車も多く、すでに駐車されている自動車と自動車のあいだの狭い隙間に停めるため、取りまわしよくバックで駐車することが普通だ。もちろん郊外の広い土地の駐車場では前向き駐車も多い。

 興味深いのは防犯上の理由だ。アメリカ連邦捜査局FBIが発表した、2024年のアメリカでの自動車盗難件数は、推定88万327件と非常に多く、日本の年間6080 件(出典:警察庁「犯罪統計資料」)と比較すると圧倒的だ。前向き駐車からバックで出庫する際は視界が制限されるため、盗難犯にとって迅速な逃走が困難になる。この特性を利用して、アメリカでは意図的に前向き駐車をする習慣があるとされている。また、ナンバープレートが後部にしか付いていない州では、警察が確認しにくいといった理由で前向き駐車が強制される場所もある。

 日本でバック駐車が浸透している理由のひとつは、駐車スペースと道路環境の特殊性にある。都市部では駐車場の枠がぎりぎりに設定されており、出入口も狭く設計されることが多い。もし前から駐車すると、出庫の際には後方から狭い道路にクルマを出さなければならず、歩行者や自転車に接触するリスクが高まる。

 警察庁の統計でも、駐車場内の事故の多くは「出庫時の後退」で発生していることがわかっており、これは前向き駐車のデメリットを裏付けている。運転免許取得時や更新時に配布される教本内にも「バックで発進することは危険ですから、車庫などに入れるときは、あらかじめ発進しやすいようにバックで入れておきましょう」と記載されている。


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